「たべていい」と言いながら綺惺くんは勝手に食べる。半分こすればすぐに無くなる。興味を失った綺惺くんが離れる。また差し入れを貰う。綺惺くんが近寄る。永久機関の完成だ。
そのうち、お菓子を目当てにしなくとも綺惺くんはわたしの元へ訪れた。「何すればいい」といいながら何もせず、わたしの手元を見ている。わたしも特別綺惺くんに何かを求めない、期待しない。休息に来ている感覚だ。
今もそれは変わらず、彼はわたしを休憩所として利用している。
綺惺くんはポッキーを食べながら欠伸を噛む。せわしない人だ。わたしもその欠伸がうつる。
「ねえ、あんたらいい加減付き合わんの?」
更紗が怪訝な目を向ける。
「付き合わんよ」
「付き合わんらしい」
「もったいな。美男美女でいいと思うんだけどな」
更紗が言う美男はわかるけれど、美女のあとに(笑)が見えた。建前と受け取る。
仲良くなってしまったのは否めない。これもまた、生き返らなければ分からなかった未来だ。しかし、彼との距離感により思春期真っ只中の女子から軽蔑と嫉みの目を向けられるかというと、そうでもない。
綺惺くんはわたしのことを女として扱わない。
よって、女子から向けられるのであれば同情の目だ。全然構わないけどさ?わたし、綺惺くんのこと好きじゃないし。



