そして僕らは愛を手に入れた

綺惺くんはその場に中腰にすわると、つまらなそうに顎を机の上に乗せた。ちいさくなったつもりらしい。まだ全然足りないけれど、良しとしよう。

 長い襟足、緩くセットされた黒髪の、そのつむじも可愛くて、よろしければ押してみたい。襟足を引いてみたい。しないけどさ。

 綺惺くんはご自由にどうぞ、と広げていたポッキーをひとつ、ほっそりとした指先でつまんだ。ああ、わたしもポッキーになりたい。罪深いポッキーが、綺惺くんのくちびるに挟まれる。ああ、ポッキーになりt

「何したの?」

 煩悩に思考回路を占領される前に理性をたもつ。

藍良(あいら)の背中にテープ貼ったのそろそろバレそう」
「なにしょうもないことやってんの」
「これ食っていい?」
「食べながら言わないでもらえませんかー」
「疲れた。ねえ邪魔。少し詰めて」
「座りながら言うのやめてくださいー」

 綺惺くんはわたしの椅子におしりを半分乗せて、わたしを壁側に押し込むように強引に座ろうとする。

 クラスメイトになって以降のわたしは、綺惺くんと話すきっかけを何度かいただいている。

 きっかけは去年の文化祭。お互い実行委員になったのだ。二度目の人生なので後悔がないように、困った人を助けることをモットーにしたわたしはイベントに積極的に参加しているのだ。直後のイベントが文化祭。誰も実行委員になりたがらなかったので、僭越ながらわたしが実行委員になった。

 ちなみに綺惺くんは、じゃんけんに負けたらしい。じゃんけんが弱い綺惺くんisかわいい。

 実行委員の活動中、よく働くわたしのことを先輩が気に入って、差し入れなどを貰うとそれを目当てに綺惺くんがやってくる。