そして僕らは愛を手に入れた

 笑いながらその未来を思い浮かべていると、ふいに肩を叩かれた。振り向いたその瞬間、至近距離で綺惺くんの顔を確認した。そのついでに、のようなタイミングで唇に触れたとても柔らかな感覚が、綺惺くんの唇だと認識するのは早かった。
  
 正常な鼓動が一瞬、リズムを崩したのは、驚いたからだ。

 顔が離れた。首を傾げた綺惺くんは、わたしの反応を伺うように見上げていた。吸い込まれそうだと、そんな錯覚に陥る。何だかおかしい。空気が甘い。

 わたしは、本当の彼女じゃ───


 「ここちゃーん!!助けて!トイレ!トイレットペーパーがない!!助けてーーー!!!!」


 空気を変えたのは恭の叫び声だった。咄嗟に顔を背けた。シャーペンが転がった。

 「(なんだそれ)」

 「何してんのかな、恭くんは」

 一日一善。わたしのモットーを果たすべくやれやれと立ち上がった。

 恭くんを救助し、部屋に戻ると空気は元に戻っていた。綺惺くんが何故わたしにキスをしたのか、とてもじゃないけれど聞けなかったし、綺惺くんも何も言わなかった。