そして僕らは愛を手に入れた

「たとえば、きみがこの先生きるはずだった寿命のすべてを僕にくれるのなら、転生してまた同じ人生を歩ませてあげる」

 ごめん、天使の少年。きみのことむっつりだと思っていたけれど、そういうわけね。

「え?でも寿命のぜんぶをあげたら、また16歳で死んじゃうんだよね」
「そうだね」
 
 うーん、それはやだな。死んで、転生できるだけで物凄いチャンスかもしれないけれど、いくらなんでも16歳で死んじゃうルートは転生ヒロインすぎる。わたし、そんなうつわじゃないもの。

「そうだ。寿命全部と言わず、寿命の半分だけでも転生出来る?」
「もちろん、できるよ」
「できるんだ!?」
「でもその代わり、君の容姿をSSランクだとすればBランク程度に落ちるけれど」
「うわあ、キツ」

 天使ルール、思ったよりしんどい。だって、自分が世間一般的なSSランクとはかけ離れていると思うのに、そこからさらに落ちるのはとんでもなくきつい。転生先、ハードモードすぎる。
 
「今すぐとは言わず、天国で転生を待っても大丈夫だよ」

 天使が微笑みながら告げる。

「あ、最初に言ってた天国!本当にあるんだね」
「楽しいところだよ。ルールはあるけれど、それを守れば比較的自由だし、食べなくてもいいし、働く義務もない、ゆっくりした場所だよ」

 今まで他人に気をつかって生きることをしていたわたしにとって、かなり高待遇な場所だ。
 
「ちなみに、ルール違反したらどうなるの?」
「転生までの待ち時間が長くなる」

 ゆるすぎる。さすが天国。ここまで聞いたら、天国がどんな場所かとても気になるけれど、おそらくその先で転生するのならばこの記憶はすべて消えるのだろう。なぜなら、この場所が本当に存在するのであれば、わたしは一度だれかの人生を送り、転生していることになる。けれども残念ながらわたしにその時の記憶もないし、実際、この場所だって見覚えがない。