「更紗ちゃん?おめでとうって、なんで?」
更紗の言葉に疑問が生まれると「ああ……なんとなく。でもなんでまた急に?」と、歯切れの悪い回答を寄越した。
けれども、更紗から見れば、絶対に付き合わないと豪語していた二人が急に手のひら返しをしたわけだ。なにか、良い言い回しはないだろうか。
……あ、そうだ。
「あれだよあれ、利害が一致したんだよ」
思いついたわたしはふふんと喉を鳴らした。綺惺くんの平和を守るために生き返ったのかもしれない、なあんていう、勘違いムーブがここに来て発生していることも、わたしのおめでたい発想を後押ししている。
「なんだよそれ。まあ、あんたらが付き合うならうちは応援するよ」
更紗がポッキーをつまむ。いつものように、ビスケットの方からポキポキと噛み砕く。
「いいよ応援なんて。多分すぐに別れるし」
「夢がないねえ、あんたって子は」
更紗は呆れたようにため息を落とした。
夢かあ……。
夢よりも、わたしに任された使命は、女よけを全うすることだ。



