そして僕らは愛を手に入れた

 恋愛感情を失ったわたしだけど、案外、恋心のない生活は快適だ。

 好きならば、綺惺くんがだれかと付き合う度にいちいち嫉妬している。

 恋人と仲睦まじい様子なんてとてもじゃないけれど静観出来ないし、告白されたり、見知らぬ誰かのストーリーにあがる綺惺くんを見てモヤモヤするのだろう。

 しかしわたしは恋愛にまつわる負の感情が全くない。メンヘラにもならない。最高だ。

 ただ、ただ綺惺くんの幸せを願っている。

 彼がお腹を空かせないようにわたしはいつも小腹を満たす何かを常備している。

 それからいつも笑ってほしい。邪魔はしたくない。迷惑もかけたくない。つまらない顔はみたくない。悲しむ顔はもっとやだ。綺惺くんが疲れたなら休まる場所になりたい。傷つける人から守りたい。彼が怪我をしたり、病気になればはやく治ってくれと願う。

 ただ、それだけなのだ。

 わたしの恋心の無さにいち早く気づいたのが、おそらく綺惺くんだ。だから彼はわたしを休憩所代わりにしている。

 全方向から好きというテープをべたべたと制服にくっつけられて、さらに優しさも相まって無碍にできず辟易していたところ、取り繕うこともしなければ恋愛感情が1ミリもない態度をとるわたしという異性が、彼にとっては貴重な存在なのだ、きっと。