そして僕らは愛を手に入れた

 誰かに優しくできるのは、自分の心に余裕がある人だと思う。

 顔だけじゃない彼の魅力に触れたわたしは日に日に目で追うようになって、それからは立派なおたくへと変化にいたった。

 けれどそこに、後悔は一ミリもない。

𓂋⟢ 

「う〜……やっぱ寒いなあ」

 週明けの今日は肌さゆるほど風は冷たく、タンスの奥底にねむる厚手の服たちを出し渋った今朝の自分を恨んだ。
 
「日凪、これ返す」

 綺惺くんの声に釣られて振り向くと、彼は自分のキャラでもなければ全く似合わない、いちご柄のタオルを差し出した。

「わざわざありがとう」

 受け取ろうとすれば、彼はひょいと手を上げてわたしが届かない場所へタオルを翳した。なんのお遊び……と思って見あげると、綺惺くんのご尊顔はかすかに歪んでいた。
 
「……また薄着」
「大丈夫。教室でぬくぬくしてるもんね」
「今日、移動教室多い日じゃん」

 かく言う今も移動教室の途中である。
 
「そうなんだよー。今日から廊下も完全暖房にしてくれないかなあ」

 そんな傲慢な願いを吐き出して、肩を落とす。取引材料、わたしの温度感覚、でも良かったかも。なくても困ることが無さそうだし、暑さにも寒さにも強いって最強じゃん?真冬に半袖姿でも顔色ひとつ変えないって、かっこいいよね。

 けれど、あいつ事故って頭おかしくなったんじゃね?説がもっと広まりそうなので、温度感覚は残していた方が正解だ。