そして僕らは愛を手に入れた

「日誌書いてたの。学級日誌」
「日直だっけ?」
「ううん、デートだって言うから代わりに」
「お人好し」
「まあね、綺惺くんと関わってたらお人好しにもなるよね」
「俺のおかげじゃん」
「はい。ありがとうございます」

 わたしの人生は、ゆるやかに、しかし確実に、望月綺惺の影響を受けている。言い逃れのできない事実は、わたしの心臓がうごく理由でもある。

 綺惺くんは学ランの下にパーカーを着込んで、フードを被っている。制服の着崩し方も、他の人が同じことをすればだらしないとか不潔だとか思うのに、綺惺くんだと不思議とおしゃれにみえる。わたしの目は随分と贔屓目だ。

「うわ、さむ」

 木枯らしが生身の肌をさらい、背中を丸めた。近頃いっとう肌寒くなってきた。秋という季節が夏の暴力により命を削られているのは明らかで、けれど、そんな夏の暑さにあまんじて、わたしは今日までセーラー服だけで過ごしていたのだけど、暦の上ではしっかりと秋。服の上にもう一枚着込んでもおかしくない。

「カーディガンがほしい。去年のは毛玉だらけだし、新しい羽織が買いたい。何色がいいかな」

 なんの脈絡もなく話を振ると、綺惺くんは「白」と雑に答えた。
 
「やだ。よごれる」
「なんで聞いた」
「買いに行こうよ」
「やだ」

 相変わらずわたしという存在に彼の興味はなさそうなのに、綺惺くんはわたしの傍を好む。その証拠に彼はわたしから離れることをせず、友人と落ち合うこともせず、並んで歩く。車道側を。