そして僕らは愛を手に入れた

 試合というご褒美が終わって、藍良くんたちは外に涼みに行くらしい。しかし、その集団に綺惺くんの姿はない。……あれ?

 ふと、むすんでいたポニーテールが揺れると、肩が軽くなった。違和感に振り向く。わたしのタオルでその輝く汗をぬぐう望月綺惺(人間国宝)がいつのまにか隣にいて、瞬間移動でもしたのかとおどろく。
 
「タオル貸して」

 望月綺惺という生ける美術品は、事後報告がとにかく多い生き物だ。

「答える前に借りるのやめよ?ていうか自分のは?」
「更衣室に忘れた」
「詰めが甘いなあ」

 完璧王子ではなく、ちょっと抜けているところも綺惺くんの可愛いポイントなのでよろしい。

 いちご柄のタオルを首に掛けた綺惺くんもやっぱりかわいい。
 そこに熱を帯びた視線はすでに無く、いつもの綺惺くんに戻っている。

「望月くん、よかったらこれ使って?」

 すると、ふと、他クラスの女子が綺惺くんにむかって自分のタオルを差し出した。わたしたちの話を聞いていたのだろう。しかし綺惺くんはそのありがたい提案を「いらない」と、無表情で突っぱねた。
 
「(ファンサ能力皆無な綺惺くん、かわいい)」