もう、恋なんて、
𓂋⟢
体育は合同授業で、今日はなんとバスケの日だ。バスケと綺惺くんはまさに鬼に金棒ってやつで、下手なら下手で可愛いけれど、中学までバスケ少年だったという綺惺くんは、当然バスケのスキルも神。
ふだん見せる無気力な雰囲気を取り払い、熱のある瞳でプレイする綺惺くん、控えめに言って人間国宝に認定されるべき。
「ねえ見た?今のノールックパス!神すぎ!」
更紗相手に騒ぐ。
「見た見た」
更紗の胸には1ミリも響かないうえに、綺惺くんにも届かないので完全な自己満だ。
「相変わらずかわいいなあ」
他クラスとのゲームのおかげでわたしは堂々と我がクラスの推しを応援できた。自己満なりに。
ありがとう体育。ありがとう高校。ありがとう綺惺くん……!
「好きにはならないの?」
妄想トリップを楽しんでいれば、更紗が現実世界に引き戻す。
「まさか。絶対好意なんて寄せないし、綺惺くんの顔を拝むだけでいいな〜」
「なんで好意を持たないって言い切れるのよ」
「だって、とりひ──……」
言いかけた言葉を頑張って飲み込んだ。それを聞き逃さなかった更紗は「取り?」と、首を傾げるので「とりあえず、好意よりも推す方が優先ってこと!」と、なんとか誤魔化す。更紗は「もったいなー」なんて興味無さそうに言って壁に凭れる。



