そして僕らは愛を手に入れた

「望月」
 
 ふと、座り心地の悪さを感じていれば、綺惺くんの名前が呼ばれた。

「呼ばれてる」

 クラスメイトの藍良くんがふらりと親指をむける。教室のとびらの近くには、一年生の中でも可愛いとうわさされている女子に囲まれて、これまたお人形のように可愛い女の子が控えめに教室の中を覗いていた。
 
「(なるほど)」

 匿って、が意味するのは呼び出しか。

「日凪、腹痛って言って」

 けれども綺惺くんが乗り気では無いのは明白だ、

「ばかなの?早く行きなよ」
「かわりに聞いてきて」
「あの子は望月綺惺に話があるの。綺惺くんが聞かなきゃダメ!」
「……だる」

 綺惺くんはポケットに手を突っ込んだまま、ふらりと立ち上がった。

 入学式直後に学校はおろか、近隣高校の綺麗どころほぼ全員とID交換したという伝説を所有する綺惺くんは、学校内で憧れのような存在を維持している。もちろん今でも定期的に告白されているのだ。

 綺惺くんは五限目のとちゅうで教室に戻ってきた。告白はどうなったのか、何をしていたのか、休み時間で聞き耳を立てていたけれど、その時間綺惺くんは、ようやくテープが貼られていることにきづいた藍良くんに仕返しされていた。
 
 綺惺くんはああやって、べたべたと誰かの好意を身体のどこかに貼り付けられているひとだ。それを煩わしく思っているのを、わたしは知っている。