「ねえ、ないよね?」
「……ないです、はい」
ライムくんは懇願するように言った。
「話をさせてほしいんだけど」
とてもではないけれど、断れるような雰囲気ではない。
素直に頷くことしかできなかった。
マイカは、私に向かってひらひらと手を振って帰っていく。
「座ってくれる?」
マイカに手を振り返しながら、でも場所はやっぱり教室なんだ、と思った。
バッグを机の上に置き、後ろ向きに座った。
教室から人がはけるのを待って、ライムくんがようやく話し始めた。
「まず言っておかないといけないんだけど、僕には何も望まないでほしいっていうのは変わらなくて」
腰かけてしまったことを後悔した。
今すぐにでも、いなくなりたかった。
「わざわざそんなことを宣言するために呼び止めたの?」
「違う! 『だけど今の状態はツラくて』ってことを言いたくて」
「そんなこと言われても……」
「ユアのこと、」
ライムくんは一瞬ひるんだけれど、それから確かにこう言ったのだった。
「それでも好きなんだ」



