沙羅は、廊下に貼り出された成績優秀者のリストの前に集まった生徒たちを改めて見回した。

 碧洋学園は進学校でありながら、生徒の自主性を重んじる校風で、校則が緩いことで知られている。そのため、髪を染めている生徒も多く、メイクをしている女子も珍しくない。制服の着こなしも様々で、「碧洋学園の生徒だとわかればOK」というレベルだ。

 沙羅自身も、ロングウルフカットの髪を栗色に染め、派手目のブレスレットをつけている。制服のスカート丈は短めで、ネイルも楽しんでいた。

   ◇◇

 中学時代の沙羅は、校則違反の常習犯だった。
 スカート丈を注意され、髪型を指導され、それでも自由を求めて反抗していた。

――こんな校則なんか、意味なくない?

 そんな彼女にとって、碧洋学園はまさに理想の高校だった。ただ、問題は学力だった。

 進学校ゆえに偏差値は高く、入試の壁は厚かった。それでも、自由な校風に憧れ、受験勉強を必死に頑張った。そして何とか合格し、今、こうして碧洋学園の生徒としてここに立っている。

 勉強についていくのは正直大変。でも——。

 髪を染め、メイクを楽しむ生徒たちを見渡しながら、沙羅は改めて思う。

――やっぱり、この学校に来てよかった!