1. 土方歳三という男
「土方歳三……?」
夜の静寂の中、その名がやけに響いた。
(え、待って……土方歳三って、あの新選組の?)
目の前の青年は、まるで夜そのものを纏ったような冷たい雰囲気を放っていた。漆黒のコートを翻し、鋭い眼光で想乃叶を見つめる。
「沖田想乃叶、お前の力は今、覚醒した。もう"鬼"はお前を見過ごさない」
「鬼……って、さっきのやつ?」
「そうだ。"奴ら"はお前の血を狙ってくる」
土方は一歩、想乃叶に近づく。
「お前は"鬼ノ血"を受け継ぐ者。新選組として、この戦いに加わるか——それとも、ただ狩られるか。選べ」
「……え?」
突然すぎる話に、想乃叶は目を瞬かせた。
(何それ……私、普通の高校生なんだけど……)
でも、さっきの鬼との戦いが頭に蘇る。
("朧月"……あの時間を止めるみたいな感覚。あれは、確かに……異常だった)
自分が"普通じゃない"ことは、否応なく理解できた。
「で、新選組って……現代にもあるの?」
「……」
土方は一瞬、言葉を選ぶように黙った。そして、低く呟く。
「新選組は、消えたわけじゃない。ただ、"形"を変えただけだ」
その言葉の意味を測りかねていると——
「ッ!」
想乃叶の背後に、またしても異様な気配が生まれた。
「さっそく来たな……!」
土方が黒い刀を抜く。
闇の中から、再び"鬼"が現れた。
「フフフ……見つけたぞ。"鬼ノ血"の継承者……!」
その鬼は、先ほどのものよりも明らかに強大な気配を放っていた。
「……わぁ、まだいたんだね」
想乃叶は竹刀を構える。
「沖田総司の末裔……いや、お前は"それ以上"か?」
鬼の言葉に、想乃叶は首を傾げた。
(それ以上って……何?)
しかし、考える暇はない。鬼が一気に襲いかかってくる。
「お前の力、試させてもらうぞ!」
2. "鬼"との戦い
鬼の爪が迫る。
「チッ、想乃叶、下がれ!」
土方が前に出ようとする——しかし、その前に想乃叶が動いた。
(また……見える)
鬼の動きが、スローモーションのように遅くなっていく。
想乃叶の"朧月"が再び発動していた。
「えいっ」
竹刀を一閃——
ズバァッ!!
鬼の胴が切り裂かれる。
「ぐあっ……!? こ、この力……!」
鬼は苦しげにのたうち回る。しかし、完全には倒れていなかった。
「フフフ……なるほど、お前の力……"時を斬る"か……!」
鬼がにやりと笑う。
(こいつ、まだ動ける……!?)
想乃叶が警戒を強めた瞬間、鬼の全身が黒い炎を纏い始めた。
「ならば、こちらも本気を出させてもらおう!」
鬼の身体が肥大化し、巨大な鬼面を持つ異形へと変貌する。
「くそ、厄介だな……!」
土方が刀を構え直す。
しかし、その時——
「——ちょっと待った!」
想乃叶が一歩前に出る。
「え?」
「……私、やってみる」
土方が驚いたように目を見開いた。
「冗談じゃない。お前はまだ力の使い方を——」
「……なんとなく、わかったから」
ふわりと笑う想乃叶。その目は、先ほどよりも鋭さを増していた。
(……この感覚、懐かしいような……)
「行くよ」
彼女の周囲の空気が、変わる。
そして——
「"朧月・弐"」
その言葉とともに、想乃叶の竹刀が蒼い光を帯びた。
「な……!?」
鬼が驚愕する間もなく——
次の瞬間、鬼の時間が完全に停止した。
「——"残心"」
スッ——と静かに竹刀を振る。
シュッ。
まるで風が吹いたかのように、鬼の身体が裂けた。
「が……あ……」
鬼は、光の粒となって消滅した。
——想乃叶の圧勝だった。
3. 新選組、再臨
夜の静寂が戻る。
想乃叶は、竹刀を収めると、ゆっくりと土方の方を振り向いた。
「……ねえ、土方くん」
「……なんだ」
「"新選組"って、どこに行けば入れるの?」
土方は少し目を見開いた後、くっと笑った。
「……お前、面白いな」
そう言って、彼は黒いコートを翻す。
「ならば、来い。お前を"鬼狩り"として迎えてやる」
——こうして、沖田想乃叶は"新選組"の一員となった。
彼女の異能、"朧月"。それは、かつての沖田総司ですら持ちえなかった、新たな力だった。
これが、新たなる"幕末"の始まりとも知らずに——。
「土方歳三……?」
夜の静寂の中、その名がやけに響いた。
(え、待って……土方歳三って、あの新選組の?)
目の前の青年は、まるで夜そのものを纏ったような冷たい雰囲気を放っていた。漆黒のコートを翻し、鋭い眼光で想乃叶を見つめる。
「沖田想乃叶、お前の力は今、覚醒した。もう"鬼"はお前を見過ごさない」
「鬼……って、さっきのやつ?」
「そうだ。"奴ら"はお前の血を狙ってくる」
土方は一歩、想乃叶に近づく。
「お前は"鬼ノ血"を受け継ぐ者。新選組として、この戦いに加わるか——それとも、ただ狩られるか。選べ」
「……え?」
突然すぎる話に、想乃叶は目を瞬かせた。
(何それ……私、普通の高校生なんだけど……)
でも、さっきの鬼との戦いが頭に蘇る。
("朧月"……あの時間を止めるみたいな感覚。あれは、確かに……異常だった)
自分が"普通じゃない"ことは、否応なく理解できた。
「で、新選組って……現代にもあるの?」
「……」
土方は一瞬、言葉を選ぶように黙った。そして、低く呟く。
「新選組は、消えたわけじゃない。ただ、"形"を変えただけだ」
その言葉の意味を測りかねていると——
「ッ!」
想乃叶の背後に、またしても異様な気配が生まれた。
「さっそく来たな……!」
土方が黒い刀を抜く。
闇の中から、再び"鬼"が現れた。
「フフフ……見つけたぞ。"鬼ノ血"の継承者……!」
その鬼は、先ほどのものよりも明らかに強大な気配を放っていた。
「……わぁ、まだいたんだね」
想乃叶は竹刀を構える。
「沖田総司の末裔……いや、お前は"それ以上"か?」
鬼の言葉に、想乃叶は首を傾げた。
(それ以上って……何?)
しかし、考える暇はない。鬼が一気に襲いかかってくる。
「お前の力、試させてもらうぞ!」
2. "鬼"との戦い
鬼の爪が迫る。
「チッ、想乃叶、下がれ!」
土方が前に出ようとする——しかし、その前に想乃叶が動いた。
(また……見える)
鬼の動きが、スローモーションのように遅くなっていく。
想乃叶の"朧月"が再び発動していた。
「えいっ」
竹刀を一閃——
ズバァッ!!
鬼の胴が切り裂かれる。
「ぐあっ……!? こ、この力……!」
鬼は苦しげにのたうち回る。しかし、完全には倒れていなかった。
「フフフ……なるほど、お前の力……"時を斬る"か……!」
鬼がにやりと笑う。
(こいつ、まだ動ける……!?)
想乃叶が警戒を強めた瞬間、鬼の全身が黒い炎を纏い始めた。
「ならば、こちらも本気を出させてもらおう!」
鬼の身体が肥大化し、巨大な鬼面を持つ異形へと変貌する。
「くそ、厄介だな……!」
土方が刀を構え直す。
しかし、その時——
「——ちょっと待った!」
想乃叶が一歩前に出る。
「え?」
「……私、やってみる」
土方が驚いたように目を見開いた。
「冗談じゃない。お前はまだ力の使い方を——」
「……なんとなく、わかったから」
ふわりと笑う想乃叶。その目は、先ほどよりも鋭さを増していた。
(……この感覚、懐かしいような……)
「行くよ」
彼女の周囲の空気が、変わる。
そして——
「"朧月・弐"」
その言葉とともに、想乃叶の竹刀が蒼い光を帯びた。
「な……!?」
鬼が驚愕する間もなく——
次の瞬間、鬼の時間が完全に停止した。
「——"残心"」
スッ——と静かに竹刀を振る。
シュッ。
まるで風が吹いたかのように、鬼の身体が裂けた。
「が……あ……」
鬼は、光の粒となって消滅した。
——想乃叶の圧勝だった。
3. 新選組、再臨
夜の静寂が戻る。
想乃叶は、竹刀を収めると、ゆっくりと土方の方を振り向いた。
「……ねえ、土方くん」
「……なんだ」
「"新選組"って、どこに行けば入れるの?」
土方は少し目を見開いた後、くっと笑った。
「……お前、面白いな」
そう言って、彼は黒いコートを翻す。
「ならば、来い。お前を"鬼狩り"として迎えてやる」
——こうして、沖田想乃叶は"新選組"の一員となった。
彼女の異能、"朧月"。それは、かつての沖田総司ですら持ちえなかった、新たな力だった。
これが、新たなる"幕末"の始まりとも知らずに——。


