レイナはるんるんで廊下を歩いていた。
やっと邪魔な義姉がいなくなったのだから、こんな愉快なことはない。
お城はざわついているが、彼女にはそんなの関係なかった。
「これで彼と暮らすことができるわ!」
小さくガッツポーズをした彼女は早速、極秘で付き合っている彼に現状を伝える手紙を書いた。
そう、彼がラビリスゲルのスパイだということも知らずに。
この手紙が今後大きな事件を巻き起こすなんて、この時は誰もが想像しなかったのである…。
同時刻、王のアルギスは自室でため息をつきながら写真を見つめた。
この写真は、正妃であり、スピレの実母、ミルフェイユだ。
彼女はスピレを産んだ後、難産ということもあっただろうか、周囲の陰口や嫌がらせにより精神的に参ってしまい、自殺してしまった。
アルギスは妻を守れなかったと罪悪感を抱いて生きてきた。
だから、せめてミルフェイユに生き写しのスピレだけはと愛情を与えて育ててきた。
ブラウシェリの出してきた、こちらに好都合の条件すら蹴ってまだスピレを渡すのを拒んだのに、彼女は自ら出ていってしまった。
「私はどうしたら良かったんだ…ミルフェイユ…」
そう呟いても写真の中の彼女はただ笑顔を浮かべて微笑んでいらだけだった。