テーブルに並べられるトースト、手作りイチゴジャム、バター、
半熟目玉焼き、ほうれん草のソテー、ヨーグルトにはちみつ、ザクロのジュース。無糖の炭酸水。ひよこ豆とトマトのスープ。今日も豪華な朝ごはんだ。わーい。
「今日もデートなんですか!? 結婚相談所で出会ったひとと!?」
「そう」
いただきまーす、と元気良く言う私を、石油王があきれた顔で見る。
「あなたにとって私はなんなんですか」
「弟」
「あなたは弟と寝るんですか」
ちなみに、今朝から英語縛りである。頭使うなぁ。
「私はあなたの夫ですよ!?」
「まだプロポーズ受けてない」
「受けてください」
「あっ、スマホ、バッグの中だ。音楽、音楽」
「ったく」
珍しく石油王が雑な言葉を使った。日本語より英語の方が得意らしい。
その方が似合ってるよ。
「どうせまた失敗するのに」
彼の部屋に置いてあったバッグから、スマホを取り出し、お気に入りの曲をかける。
「俺にしとけば良いのに」
「ん、なんか言った?」
「俺はあなたを心から愛してる!!
あなたにふさわしい人間になりたくて、勉強もたくさんしてる!! 日本語も覚えた!!
あなたが不安にならないように、医者を目指してる!! あなただけじゃない。たくさんのひとを助けられるように!!」
「で、
あなたは何が欲しいの?」
「あなたが」
スマホごとぎゅうっと抱きしめられてほっとした。この腕の中って、本当に安心できる。心地良い。あなたは本当に優しくて誠実だ。
「朝ごはん食べよ」
「あぁ、いっしょに食べよう。My Destiny」
「私、あなたに借りがあるね」
「俺に?」
私は、
つま先立って、彼の唇にそっとキスをする。
「昨日の男を始末してもらった」
「俺がやりたくてやったんだ。貸し借りじゃない」
「あらそう? ありがとう。
じゃあ、朝ごはん食べ終わったら、私は片付けしてゆっくり寝るね。今夜デートだから」
「どうしたら俺と結婚してくれるんだ!!」
ついに余裕がなくなった彼に、私はニッコリと微笑みかける。
「今夜のデートも邪魔しにおいで。
待ってるから」
「My Destiny!!」
彼の顔がパアアアアッと明るくなり嬉しそうに私をぎゅうぎゅう抱きしめてくれる。あぁ、可愛い。
「やっと、
飾らない姿を見せてくれたね」
「え?」
私は、
彼の鼻先に、ちゅっと軽くキスをする。
「朝ごはん食べたら、片付けしてお風呂入ってヨガして寝よう。
今夜はデートデート」
「俺とデートして!! あなたの行きたいとこ、どこへでも連れてくから!!」
「駄々こね可愛い。ベイビーちゃんだね。まだ」
「俺はベイビーじゃない」
彼が私をキッとにらんだ。すみれ色の視線が突き刺さる。
(ゾクゾクする)
「他のやつのところへなんて行かせない。あなたを愛するのは俺だけだ」
ドキッ、とした。
これが、彼の本音。素の彼。素の表情。
「今日は、
あなたをベッドに閉じこめて、
1日中俺だけを見ていてもらう」
やっぱり、可愛いなぁ。年下。育てがいがある。しかも語学堪能で、知識も豊富だから、学べることもたくさんある。
(いつか憧れた海外。海の向こうからやってきた運命のひと)
「私には断る権利がある」
「あるね。だけど、断らせない」
「どうやって?」
「俺から離れられなくなるくらい、気持ち良くさせてあげる」
(悪くない)
もうちょっと、この可愛い彼の成長を見守っていたい。
もうちょっと、
愛し愛される練習をしたい。あなたと。まだ慣れていないから。
(大好きだよ)
この言葉はまだ心の奥にしまっておく。せっかくの心のこもった朝ごはんがさめてしまうから。(今はスープのさめない距離のお隣さんのままで
)
2025.04.19
蒼井深可 Mika Aoi
半熟目玉焼き、ほうれん草のソテー、ヨーグルトにはちみつ、ザクロのジュース。無糖の炭酸水。ひよこ豆とトマトのスープ。今日も豪華な朝ごはんだ。わーい。
「今日もデートなんですか!? 結婚相談所で出会ったひとと!?」
「そう」
いただきまーす、と元気良く言う私を、石油王があきれた顔で見る。
「あなたにとって私はなんなんですか」
「弟」
「あなたは弟と寝るんですか」
ちなみに、今朝から英語縛りである。頭使うなぁ。
「私はあなたの夫ですよ!?」
「まだプロポーズ受けてない」
「受けてください」
「あっ、スマホ、バッグの中だ。音楽、音楽」
「ったく」
珍しく石油王が雑な言葉を使った。日本語より英語の方が得意らしい。
その方が似合ってるよ。
「どうせまた失敗するのに」
彼の部屋に置いてあったバッグから、スマホを取り出し、お気に入りの曲をかける。
「俺にしとけば良いのに」
「ん、なんか言った?」
「俺はあなたを心から愛してる!!
あなたにふさわしい人間になりたくて、勉強もたくさんしてる!! 日本語も覚えた!!
あなたが不安にならないように、医者を目指してる!! あなただけじゃない。たくさんのひとを助けられるように!!」
「で、
あなたは何が欲しいの?」
「あなたが」
スマホごとぎゅうっと抱きしめられてほっとした。この腕の中って、本当に安心できる。心地良い。あなたは本当に優しくて誠実だ。
「朝ごはん食べよ」
「あぁ、いっしょに食べよう。My Destiny」
「私、あなたに借りがあるね」
「俺に?」
私は、
つま先立って、彼の唇にそっとキスをする。
「昨日の男を始末してもらった」
「俺がやりたくてやったんだ。貸し借りじゃない」
「あらそう? ありがとう。
じゃあ、朝ごはん食べ終わったら、私は片付けしてゆっくり寝るね。今夜デートだから」
「どうしたら俺と結婚してくれるんだ!!」
ついに余裕がなくなった彼に、私はニッコリと微笑みかける。
「今夜のデートも邪魔しにおいで。
待ってるから」
「My Destiny!!」
彼の顔がパアアアアッと明るくなり嬉しそうに私をぎゅうぎゅう抱きしめてくれる。あぁ、可愛い。
「やっと、
飾らない姿を見せてくれたね」
「え?」
私は、
彼の鼻先に、ちゅっと軽くキスをする。
「朝ごはん食べたら、片付けしてお風呂入ってヨガして寝よう。
今夜はデートデート」
「俺とデートして!! あなたの行きたいとこ、どこへでも連れてくから!!」
「駄々こね可愛い。ベイビーちゃんだね。まだ」
「俺はベイビーじゃない」
彼が私をキッとにらんだ。すみれ色の視線が突き刺さる。
(ゾクゾクする)
「他のやつのところへなんて行かせない。あなたを愛するのは俺だけだ」
ドキッ、とした。
これが、彼の本音。素の彼。素の表情。
「今日は、
あなたをベッドに閉じこめて、
1日中俺だけを見ていてもらう」
やっぱり、可愛いなぁ。年下。育てがいがある。しかも語学堪能で、知識も豊富だから、学べることもたくさんある。
(いつか憧れた海外。海の向こうからやってきた運命のひと)
「私には断る権利がある」
「あるね。だけど、断らせない」
「どうやって?」
「俺から離れられなくなるくらい、気持ち良くさせてあげる」
(悪くない)
もうちょっと、この可愛い彼の成長を見守っていたい。
もうちょっと、
愛し愛される練習をしたい。あなたと。まだ慣れていないから。
(大好きだよ)
この言葉はまだ心の奥にしまっておく。せっかくの心のこもった朝ごはんがさめてしまうから。(今はスープのさめない距離のお隣さんのままで
)
2025.04.19
蒼井深可 Mika Aoi



