となりの石油王サマ

「どうして私なの?」
「あなたが私を恐れないからです」
「え?」
キスの合間の質問に、石油王は目を細めて柔らかく答えた。
「この大きな姿のせいで、みな私を恐れます」
「優しい目をしてるのに」
「日本では、外国人は恐れられます」
「ひとによるよ」
「私を見つけてくださったのが、あなたで良かった」
またひとつ、甘ったるく腰が抜けそうなキスをされた。

「友だちはいっぱいいます。
ですが、なんの偏見もなく接してくださったのはあなただけ」
石油王が、私をぎゅうっと抱きしめながら、甘くささやいてくる。
「私を何回もふったのもあなただけ」
「あなたの要求は無理が多すぎるよ」
「私はあなたといっしょに暮らしたい。あなたの望む場所で、あなたの望むスタイルで」
「私は日本に住みたいよ」
「ならそうしましょう」
「油田も要らないし、たくさんのお金も要らない」
「では、あなたの望むものは」
「家族」

「では、
私があなたの家族になります」

こんな風に、
優しく抱きしめられ、守られながらプロポーズをされることになるとは思いもよらなかった。
あなたの腕がこんなに安心できて、それ以上にドキドキできる場所だったなんて。
「ともに学び、働き、少しずつおたがいを知って行きましょう。My sweetheart」
「どうやって?」
「手始めに、
明日から、英語で会話しましょうか」

強く抱きしめられる、それ以上に強く抱きしめ返したいと思った。
優しく甘くキスをされる。それ以上に、優しく甘いキスを返したいと思った。
今夜。

次の朝。
目覚めたら、私は彼のココア色の広い胸に抱かれ、ふわふわと髪を撫でられていた。
なんだか泣きたいような、思いきり甘えたいような気持ちになって、
私は彼の胸に顔をうずめた。

「What!?」