公爵家の一室。
「ウェイタス...!」
「なんだよ、そんなに声をあげて」
声を上げるに決まってる。
婚約者が他の女性と寝たと知ったらね!
「貴方は私の婚約者なのよ!?私の妹となんて寝たなんてどうかしてる!」
義妹のリリア・ディカッシュ。
ディカッシュ公爵家で蝶よ花よと育てられた私の妹。
だからか、悪い癖があった。
私のものを欲しがるという癖。
「寝たなんて言い方はやめてくれ。僕とリリアは愛し合っているんだ。だから、君とは婚約破棄しようと思っていた」
はあ!?
妹と親密なことは把握しており、注意したことはある。
その後、ぱったりと見なくなったと思ったら内密に会っていたとは。
そんな不誠実な真似をする人ではないだろうから貴方を婚約者にしたのにっ。
「ええ、喜んで婚約破棄するわよ!泣いて縋っても許さないから」
「誰がそんな真似するものか。強がっているのか?ずっと思っていたけれど、本当に可愛げがないな」
ああ、貴方はずっと私のことを可愛げがないと思っていたのね。
好きと可愛いと言ってくれたのは、嘘だったのかしら。
貴方を好きになれる、貴方となら幸せになれると思っていたのが馬鹿みたい。
この人はもうどうでもいい。
私が貴方を捨てたらリリアも貴方を捨てると思うわ。
許さないんだから。
一番許せないのはリリアよ。
私のものを欲しがってばかり。
「......っ!」
泣いてしまいそう。
「おねーさま!ごめんなさい...!私ウェイタス様と愛し合っているんです」
最悪のタイミングで登場するリリア。
私はぐっと涙を堪える。
