ワケあり転校生×総長さまの甘くてキケンな溺愛契約⁉

「実はね、私……今は乙羽(おとわ)女学院の中等部に通ってるの」

 乙羽女学院とは、かなり古くからの歴史がある名門お嬢様学校だ。

 瞳ちゃんが初等部の6年間その学校に通っていたと知ったときは、目が飛び出るほどびっくりしたのを覚えている。

「え? いつから?」

「茉紘が転校したタイミングで出戻ったんだ。両親からもそうしなさいって言われて……」

「じゃあ、天堂くんとの婚約は?」

「なかったことにしてもらったよ」

 あっさりと答えるなり、瞳ちゃんは清々しい顔になった。

「伊吹くんってかなり束縛が激しかったんだ。私が男の子とやり取りしてないかスマホをチェックしたり、推し活をやめるように強制したり……」

「そうだったんだ……」

「うん。でも、相手は昔から決まってた婚約者だったし、私だけが我慢すればいいと思っていた。でも、茉紘が伊吹くんから助けてくれたのを思い出したら、なんか吹っ切れちゃって」

 私が瞳ちゃんの前で超能力を使ったことが、変わるきっかけになっていたなんて。

 あの日の夜から、能力で瞳ちゃんを怖がらせてしまったこと、何でもっと冷静になれなかったのかと後悔と自己嫌悪に苛まれていたけれど、悪い結果ばかり生み出していたわけじゃないんだな。

「茉紘は黒崎学園なの?」

「うん。生徒の空きがあったし、校則もゆるいからね」

「そう……」

 なんだか含みのあるような、意味深な口調で瞳ちゃんが相槌を打った。