ワケあり転校生×総長さまの甘くてキケンな溺愛契約⁉

    ◆

「茉紘……、さっきは悪かったな」

 教室に戻る途中、昴くんがいきなり私に謝ってきた。

「わ、悪いって何? ていうか、私に謝ることあったっけ?」

「茉紘を助けに行くのが遅くなってしまったからだよ。下手したらAntaresと一戦交える可能性もあったから、Regulus全員を集めたけど……今思えば、俺一人で乗り込めばよかったって後悔してる」

 昴くんの沈んだ横顔を見ていると、なんだかこっちまで胸が締め付けられる。

 別に昴くんは何も悪くないんだから、罪悪感に苛まれなくてもいいのに……。

「昴くんはヒーローだよ」

 励ますつもりで、思ったことをそのまま声に出してみた。

「俺が、ヒーロー……?」

「うん。だって、私がピンチの時に駆け付けてくれたじゃん。それに――」

「それに?」

「『ヒーローは遅れてくる』って言うでしょ。昴くんは遅くなったって言ってたけど、助けに来てくれて本当に嬉しかった! ありがとう」

 お礼を言って微笑むと、昴くんは一瞬目を丸くした。

 何故か私から視線を逸らして、ずんずんと先を歩き出す。

「昴くん、どうしたの?」

「何でもない。早く教室戻るぞ」

「うん!」

私は大きくうなずいて、耳たぶが赤くなった昴くんの後を、軽い足取りで追い駆けた。