ワケあり転校生×総長さまの甘くてキケンな溺愛契約⁉

「おっ、チャーンス」

 ふと聞こえてきた声にハッと我に返った瞬間。昴くんの背後に立つLabyrinthのメンバーが、鉄パイプを振り上げていた。

「危ない!」

 昴くんが私の声に気づいたときにはすでに、鉄パイプは彼目がけて振り下ろされていた。

 このままじゃ、昴くんが避けても絶対に間に合わない。

 私は無我夢中で鉄パイプに向かって手をかざした。

 宙に浮け! 曲がれ! と念じると、鉄パイプは男の子の手からするりと抜けて宙に浮かび、針金のようにグネグネと曲がり始める。

「う、うわああっ‼」

 昴くんを襲おうとしていた男の子は、鉄の塊になって自分の足元に落ちたそれから、慌てて逃げ出した。

「ま、まひろん⁉」

「茉紘ちゃん、今のって……」

 藤崎くんと御子柴くんが敵を投げたり蹴ったりするのを止めて、唖然とした顔で私を見つめる。

 この反応からして、きっと私が超能力を使っているところを目撃したんだろう。

 内心怖がっているのかもしれない。天堂くんがそうだったように、二人が私を忌み嫌う可能性があることも覚悟している。

 でも、それ以上に。自分でもおどろくくらい、心が吹っ切れていた。