ワケあり転校生×総長さまの甘くてキケンな溺愛契約⁉

「ひっく、ぐすっ……」

 すれ違う人たちにびっくりされないように、背中を丸めて必死に涙をこらえる。

 でも、いくら我慢しようと頑張ったけど無理だった。

 いずれ、昴くんは私の元を離れる。しょせん、私たちはただの契約上の関係。

 きっと、今後も変わらない。冷たい事実に胸の奥が締め付けられて、そこから絞り出されたみたいに涙があふれて、アスファルトの上にぽつぽつと小さなシミを作っていく。

 ――まるで雨の降り始めみたいだな。と、頭のどこかで思った瞬間。

 頭上からぱたぱたと音を立てて、大粒の雨が勢い良く降ってきた。

 夕立だろうか。びしょ濡れなるのは嫌だけど、泣いてるのをごまかせるならまあいいか……。なんて考えたとたん。何故か私の頭の上だけ雨がやんだ。

「風邪引くぞ」

 疑問に思う間もなく、背後から聞き覚えのある声がしてハッとする。

「昴くんっ……!」

 振り返るとそこには、日直の仕事で遅くなるはずだった昴くんが立っていて、これ以上濡れないようにと私に傘を差してくれていた。