ワケあり転校生×総長さまの甘くてキケンな溺愛契約⁉

「遅くなってごめん」

 駈け寄ってきた昴くんに「ううん。大丈夫だよ」と返事をする。

「そっか。ならいいけど……さっきの女の子は?」

「昔の友達」

「ふーん……」

 昴くんは相槌を打つと、小さくなっていく瞳ちゃんに視線を寄こした。

 かと思えば、いきなり目を凝らして、食い入るように彼女を見つめる。

「あれ? もしかして、あいつ……?」

 ぽつりと呟いた昴くんの声が、私の耳にこびりつく。

「どうかした?」

「いや、何でもない」

 あれ? はぐらかした?

 先ほど電話をかけてきた相手や急用の内容といい、瞳ちゃんのことで言いかけたことといい――今日の昴くんは、どうして私に隠し事ばかりするんだろう……?

 答えは本人にしかわからない。

 けれど、今の私にとっての昴くんは、手を伸ばせば届くほど近いのに、心の距離が果てしなく遠く離れている気がして。

 どんなに問いかけても、返事を待っても、何も教えてくれない気がした。