藤田くんが机の周りを歩きながら、各々が勉強する科目で質問をしていく……っていう感じで進めていれば──
「この公式どういうこと?」
「これはね、あ!志賀ちゃんこっちカモーン」
おいでおいでされ、かんちゃんが黒板を使う藤田くんからの解説を聞きに行ったから、私も聞いとこうと離れたところから眺めていれば、
「……夜」
「っ!!」
2人の時しか呼ばないと言っていた呼び方で私のことを呼んだ先崎くん。勿論小声だったけど。
まさかこの場で呼ぶとは思ってなかったから、驚きのあまり手からシャーペンが落ちた。
「……まだなれない?この呼ばれ方」
「う、うん。まだちょっとなれない、かな」
「じゃあ呼べる時に呼んどくね。こっそり」
なんて言って、赤くなる私を『夜』と小さく呼び、先崎くんはなんでもないよと笑う。
それを何度か繰り返された。
いくら、なれるためと言っても……毎度跳ねあがる心臓が大変。全然勉強の内容が入ってこないし……。
「──ね、2人も僕の解説分かりやすいでしょ?」
「え、ああ!はい、分かりやすいでした!」
「っふ」



