──帰り、暗いからと先崎くんは駅まで送ってくれた。
「今日はありがとう。お店よりお家に長居してしまって……」
ありがとうとごめんと意を込めて、頭を下げれば、先崎くんは大きく首を横に振った。
「全然。またおいでよ。俺も店番してたりするから。……それに、兄貴も黒羽さんのこと気に入ったみたいだし。まぁ、ちょっと遠いと思うけど」
「うん、また是非。……それじゃあ、また学校でね」
手を振って改札の方へ歩き出し、先崎くんに背を向ける。
買ったキーホルダーがバッグから覗いていて、ひとり笑みをこぼし、どこにつけようか迷う。
でも落としたくないしなぁ。
「ちょい待ってっ……!」
「っ!?」
そんなことを考えながら、改札を通ろうとした直前、不意に腕をつかまれた。
よろめき振り向く私を先崎くんは見据える。
「先、崎くん?」
足をとめた私に『あ、ごめん』とすんなり腕を掴んでいた手が離れていく。
そして、どこか躊躇うような素振りを見せた。
「……俺は、黒羽さんの名前いいと思う。あだ名のせいで自分の名前が嫌いってんなら、そう思わなくなるくらい俺が名前呼ぶ」



