「美味しそうだよ?シンプル・イズ・ベスト、ってとこかな。ありがとう」
「こちらこそ。ありがと」
気に入ってくれたのか、先崎くんはまだクマのマフィンを見つめてる。
「あ……でも、交換するの私ので良かったの?藤田くんとか他に上手な子、居ると思うけど」
料理上手な子や、お菓子作りが趣味だっていう子はいたはず。私より何倍も凝ったデコレーションしてるの見かけたし……。
でも先崎くんは静かに首を横に振った。
「いや、陽キャと交換とか無理……」
「あー」
そう言われると共感しかないな。
私も自分から交換を申し出るとか絶対ないから。
「フジのは、何ぶちこんでるか分からないからこわいし」
え、藤田くんマフィンに何いれたんだろ……ちょっと気になるかも。
それに、と先崎くんは続けた。
「……陽キャのお菓子こわいもん」
──え?
お、お菓子がこわいってはじめて聞いた……。
でも、袋からマフィンを小突く先崎くんの姿を見ながら思った。
先崎くんが私と交換したいって思ってくれたことが――すごく嬉しいって。



