あの桜の木の下で

「やっぱり、戦った後は甘いものに限るよね!」

総司は嬉しそうに団子を頬張っていた。

「……お前、本当にさっきまで人斬ってた奴か?」

「え? 何か言った?」

「……いや。」

俺はため息をつきながら、お茶を一口飲む。そうちゃんの戦いぶりは相変わらずだった。優雅で、冷徹で、そして速い。あの浪士たちは、彼に出会ったことを悔やんでいるだろう。

「……はるくん?」

「ん?」

「さっきの勝負、ちゃんと認めるよね?」

「……どの勝負の話だ?」

「団子奢り勝負!」

「……はぁ。」

俺は腕を組んで考え込む。確かに、そうちゃんの方が早く敵を倒していた。しかし、俺も十分に働いたはずだ。

「引き分けってことには……」

「だーめ。」

「ちっ……」

この笑顔、絶対に譲る気はないな。仕方ない……。

「はいはい、分かったよ。奢ればいいんだろ。」

「やったぁ!」

総司は満面の笑みを浮かべながら、追加の団子を注文する。

「おばちゃん、もう一本ずつ!」

「はいよ! しかし総司ちゃん、相変わらず元気だねぇ。」

店の女将さんが笑いながら団子を渡してくれた。

「えへへ、今日は特別に美味しい気がする!」

「俺の財布が犠牲になってるからな……。」

「奢られる団子って、美味しさが増すんだよ?」

「……お前は本当に変わらないな。」

俺が呆れて言うと、そうちゃんはニコッと笑った。

「はるくんも、変わらないよ。」

その言葉に、少しだけ胸が温かくなる。

「……まぁ、たまにはこういうのも悪くないか。」

俺も団子を一本手に取る。

「でしょ?」

春の風が吹き、穏やかな午後の日差しが俺たちを包み込む。

そんな束の間の平和――。

しかし、それが長く続かないことを、俺たちはまだ知らなかった。