すべてはあの花のために➓


 それから、パーティーが終わって片付けをしていたら、あいつとツバサが部屋を出て行ったんだけど。


「(いやいや、二人にしたらヤバいって。今のツバサはカナよりもヤバい)」


 弟のオレが言うんだ。絶対にそう。


「(……ッ、どこ行った……!)」


 鍵が閉められるところと言ったら、理事長室か生徒会室だ。恐らく生徒会室だろう。そう思っていたら、案の定鍵かかってるし。中からあいつの叫び声が聞こえるし。


「(あんのっ、クソ兄貴……ッ!)」


 大急ぎで内緒で作っていたスペアキーを使い扉を開けて、どこからか降ってきたスリッパでクソ兄貴の頭を打っ叩く。


「がっつきすぎ」


 ほんと、誰これ。こんなオカマ(ツバサ)見たことないんだけど。


「……邪魔すんな」


 とか言うでしょ~? こいつも困ってるじゃん。それくらいは理性を保って欲しいんだけど。


「あーあ。オカマの方がよかったと思うのはオレだけじゃないはず」

「何勝手に鍵開けて来てんだよ。今俺がこいつと話してんだ。帰れ」


 うっわ。全然周りが見られてないじゃん。言わないからって襲うな。
 まあ喧嘩が始まりそうなところで、あいつがツバサを生徒会室から放り投げてくれた。最後までしつこかったから、あいつもちゃっかり鍵まで掛けてたけど。


「…………っ。ごめん。なさいっ」


 ……オレに、気づいていないのか? いや、さっき思い切り邪魔したから、すっかり抜け落ちてるのか。扉の前でへたり込んで、ごめんなさいと涙を流している。


「……何? 今度はどうして泣いてるの?」


 立とうとしないこいつの横にしゃがみ込み、涙を拭ってやりながらそう聞く。ツバサが好きだとほざいてくるけど、どうやら友だちとしてみたいで少しほっとする。
 変な日本語をなんとか解釈して……って言ってもまあ、謝りたいんだろうなとは思ったけど。


「(オレの前で泣いてくれてるだけ、信用してくれてるんだろう)」


 そう思って、ズキリと心が痛くなる。……気のせいだ。こんなの。
 それから、父さんと母さんの話をツバサとしてたと教えてくれた。母さんのこともすごく心配してるみたいだ。アオイが作ってしまった薬だから、きっとこいつも気にしてるんだろうな。


「(あんたが気にすることなんて、一つもないっていうのに)」


 子どもみたいに笑って、オレの服を引っ張ってくるこいつに、オレも自然と頬が緩んでしまう。

 そのあと、どうやら今日で生徒会が最後だということが、こいつにとってはすごく寂しいことで。不安なことで。悲しいことなんだと。よくわからない日本語から理解する。


「(大丈夫だよ。次も、みんないるからね)」


 ま、ついでに王子もいるけど。あと先生も。


「(初めはつらいと思う。追い込むようにするんだから)」


 でも、信じてて。絶対に、助けてあげるから。