すべてはあの花のために➓


「(……空気が鋭くなった。やっぱりこの子、使えるわ)」

「ぶっちゃけて言いますけど、オレはあいつとは友達だと思ってないんで」

「え?」

「オレの友達の友達になったから、仕方なくつるんでただけなんで」

「……そう」

「あんな、どこから来たのかわからないような、気持ち悪い奴の、みんなどこがいいんだか」

「輪を乱された感じ?」

「……オレにとって、みんなは大事なんですよ」

「だったら、その不純物をあなたはどうするかしら?」


「そんなの」と、彼は睨むようにこちらを向いてくる。


「ハルナと同じ痛み、味わえばいい」

「交渉成立ね?」


 犠牲者ほど、扱いやすいものなどない。そして、大事なものを取ってしまえば容易いこと。


「(このままいけば、葵くんとの結婚までに消えちゃうかもね~)」


 これから報告が楽しみでしょうがなくなった。


 ❀ ❀ ❀


「――だから、オレが使える道具だってことをアピールすればいいんだって」

『でも、危険だよ……!』


 どうやって乗り込むのか聞かれそう答えたら、みんなが全力で反対する。


「……ま、確かにね。オレよりもレンが危険かもね」

「おい」

「でも多分大丈夫だって。オレ運あるし」

『だからあー……。ただの運だからー……』

「でも逆に、これ以外に方法なくないですか? たまたま知ったオレが、レンを脅してあそこまで連れて行ってもらう。……うん。我ながらいい考え」

「……別に、脅さなくてもよくないか」

「ダメだよ。ちょっとでも使える奴だって思わせないと。やり方はあいつらと一緒だ。大好きな方法でしょ?」

「それは、……確かにそうだけれど」

「だから、レンもオレが使える人間だってことをしっかりアピールしてね」

「もう脅されてる時点で、同じ分類の人間だと思うだろ」

「え。嫌だよ。一緒にしないでよ。オレは趣味でやってるだけだし」


 みんなには揃って「変わらないから!」と突っ込まれたけれど。


「使える人間だと思ったら、向こうは何かしら条件言ってくるだろうし。目撃してるんだから、ただでは逃がさないでしょ」

「条件というのはぁ、やっぱり人質とかになるんですかねえ……」

「だろうね。でもそんなのも関係無しに、オレは道具として使われることを選ぶけどね」

「どういうこと?」

「オレが犠牲者と知っているんだから、家の言い方だったらあいつを傷つけたくなるように思わされるってこと」

『……そ、れは……』

「でも本当のことを知ってるんだから、あっちが罠にかかってるんですけどね。……罠にかかればこっちのもんですよ」

『ヒナタ……』

「大丈夫大丈夫。オレ、ちゃんと家の役に立ってみせるからさ」


 オレを敵にまわしたこと。……地獄で後悔すればいいよ。