時刻は4時半。アオイよりも先に、メールを送った相手から連絡が入った。
「もしもし。朝からすみません」
『ええよ。どしたん? なんかあったん?』
相手はマサキさん。流石によく知らない土地を当て、ずっぽうで探すのも厳しいものがある。
「お願いがあるんです」
『おう。なんや? 言うてみ?』
「アッシーになってください」
『はい??』
事情を話したところ、あるところで電話の向こうの雰囲気が変わった。
『……望月、やて……?』
「え。ま、マサキさん?」
あの時は全然思わなかったのに、今電話越しに途轍もない暴力団特有の殺気が伝わってくるんですけど。……でも。
「……マサキさん、心当たりが」
『いや、ちゃうかもしれん。……いや、絶対ちゃう』
「えーっと」
『行くんはいつや』
「春休みに」
『せやったら、それまでに『望月さん家』をその地域周辺で探せばええんやな』
「はい。ある程度絞って、当日はチャイム鳴らしまくります」
『俺は鳴らさんで』
「はい。十分です」
『せやったら、紫苑さんにも協力して探してもらうで。それはええか?』
「あ、はい。助かります」
『そうやな。……あとは、千風くんのばあちゃんも引き入れよか』
「え? まあフジ婆にもアテがあるか聞こうとしてましたけど……」
『そうか。せやったら、そっちは日向くんにお願いするわ』
「……マサキさん。何が引っかかってるんですか」
『……せやな。そうじゃないことを願いたいところや』
「どういうことですか」
『……ま、その日になー。ちゃんと調べとくんやでー』
「あ、はい」
最後は、前会った感じのマサキさんだったけど。
「京都と望月に、何があるっていうんだ」
まだ、朝が早い。今日は学校休もうかな。特に生徒会の集まりもないわけだし。
「……な~んか、知ってそうだなフジばあも」
高千穂。茶道の家元。今はチカのことがあってこっちに移ってきたけど、元は京都の人間だ。
そのあとすぐ。5時になる直前。アオイから一通のメールが届く。
「……え」
電話を切ってから、大体二時間くらい経った。きっと、長い文章でも打っているんだと、思っていたんだけど。
届いたメールには、単語が数個、並べて書かれていただけだった。
《危ない 葵 存在
絶対 言う ダメ》
「言いたいことはわかったけど……」
あいつの存在は言わないで、両親を探せってことだ。
「……危ないって、どういうこと」
アオイはまだ、何か知ってるんだ。でもきっと、さっきみたいに恐ろしくて、怖くて、とても言えないんだ。
「ていうか、あいつのこと言わないでどうやって探せって……」
頭が痛くなってしまった。何これ。まだなんか一悶着ありそうなんだけど。
本編の裏側の話でしょ? 裏の方が濃くない?
「はあ。ま、全部丸っとまとめて助けてやるって言ったしな。……いや、誰にだよ」
まあわけありなら、一発殴る前に、話ぐらいは聞いてあげようじゃん。
「ちゃんと助けてあげますよ。……ね? 望月さん」
けれど隠されていた真実は、【わけあり】などと簡単に言えるようなものでは、到底なかったのだ。



