すべてはあの花のために➓


「(……家の動きはわかった。大体オレの予想通りだけど)」


 でも問題は、京都の場所を絞ることができても、動ける人がいないことだ。


「(……それに)」


 聞いてはいるんだろう。でもさっきから、言葉を発さないアオイが気になる。


「(一体どうしたんだろう……)」


 黙ってしまったのは、京都のあの場所の話が出てからだ。もしかして違うのだろうか。


「(取り敢えず報告は聞いた。あとはこれからの動きだ)」


 動けないと言っても、それは平日はの話。学校がない日ならオレは動ける。まあみんなはどうか知らないけど。


「(京都、か。だったらまずは……。あとあの人もか)」


 それからは、これからの動きについてみんなで話し合い、表向きは家の指示のままに。水面下では、あいつの守りたいものの保護と、それから足枷となるあいつの過去の話を、あいつの口からさせること。
 そうするために、みんなもしたくないだろうけれど悪役を演じて、あいつを追い込むように動くことになった。

 でも、レンも悪役に回るのはちょっと計算外だった。……ふむ。暗黒騎士か。なかなかいい響きかも。


「(最後の最後。名前を呼んで助けてやるのは、レンの仕事だから)」


 それから、京都の方へはオレが出向くことに。茨城の方も、時間が空いた時に、みんなが調べてくれることになった。



「……アオイ? どうしたの。何があったの」


 あのあと今日は帰ることにして、電話を繋いだままオレは家に帰っている。


「……違った、とかじゃないんでしょ?」

『…………』

「……え。聞いてるよね」

『…………………………………………うん』

「長ッ」

『……ひ、なた……』


 絞り出したアオイの声は、どこか震えていて。


「うん。……どうしたの? 不安? 怖い?」

『…………あ。…………。あ……っ』


 これは、相当酷い。恐怖でなのかわからないけど、言葉が上手く紡げないくらい、奥歯がガチガチと鳴っている。


「……アオイ。無理しないで」

『…………。あ。……。っ。…………』


 一体、アオイに何が起こってしまったんだろう。


「……アオイ? 喋れない?」

『…………。…………っ』


 言葉に出すのが、それほどキツいのか。……だったら。


「……メールは? いけそう?」

『……。が。んばる……』

「うん。時間かかってもいいから、よかったら教えてくれる?」

『……。うん。……切。るね……」

「うん。……また明日ね。おやすみ」

『……お。おやすみ……っ』


 最後も、なんとか振り絞って出した感じだった。


「……何があるんだ、京都に」


 助けてやる。あいつだけじゃない。アオイもだ。
 オレは、ある場所へ一通連絡を入れて、どちらかから連絡が来るまで、家に帰って眠りについた。