USBを先生の部屋のパソコンに繋いで、データを確認した。パソコン自体にロックがかかってても、この謎のUSBは関係ないらしく、丸ごと本当にデータを完コピしたらしい。だから、その中のデータを調べていたんだけど。
もちろんその中には仕事のデータも含まれてた。でも、あるフォルダの中にはやっぱり、オレが思っていたようなものが入っていて。
「あのねアオイ、それから理事長。これは見ない方がいいので口頭で説明しますね」
そういえば言ってなかったな、ここにいるメンバーにも。
あのミクリという男は、アイの母親のアズサさんを、異常なほどに愛してた。それはもう、あいつのことを彼女と重ねて見てるほど。
あいつがアズサさんに似ている表情が、どうやら苦しんでる顔みたいで、このフォルダの中にはそんなあいつの写真ばかりが山ほど入ってたんだと。そういうことを、電話の向こうの二人にも伝えた。
「……九条くんは、この写真を見て、動揺とかしないんだね」
「まあ一回見せられてるから」
「え」
「その時に秘書が狂って、壊れて、写真も見せてきたかと思ったら、似てないのかビリビリ破きだして、終いには自分がハルナを殺したまで言って来やがったから」
『ヒナタ……』
「何もかも解決したら一発ぶん殴る……じゃあ済まないかもしれないから、誰か止めてね」
……あ。返事がない。結構冗談目に言ったのにな。まあしょうがないか。……ほんと、みんなやさしいよね。
でも今の目的は、あいつの名前の手がかりを探すことだ。みんなも切り替えて、パソコンへと向かって探してくれたけど。
「う~ん。名前の手がかりになりそうなものはないわね……」
「……そうですか」
どうやら、パソコンにそのデータは入れてないみたいだ。まあ今の世の中、勝手に人のパソコンとか、ハッキングとかして見られたりするからね。大事なものは、そんなところに入れないか。
まあ持ってたとしても、いつも持ち歩いてるタブレットとかスマホになら、もっと高い確率で入ってそうだけど……それだったら、危険率だって上がる。
「うん。やっぱりダメみたいだわ。あのパソコンには何も入ってなかったみたい」
「……だったらなんですけど」
そう言ってオレは、スマホの画面をみんなに見せる。
「実は、あの部屋に入ってもよくわからなかったんです。すみません、大口叩いておいて」
みんなも、最初から確実な情報が得られると思ってなかったのか、小さく笑っている。
「まあ、あと見つけたのって言ったらこれくらいなんですけど」
それは、秘書の部屋のゴミ箱に捨てられていたレシート。そのレシートの写真を、オレは撮ってきていた。
「……こ、れは……」
「どうです? まあまあいい情報になりそうじゃないですか?」
ほんの少し、したり顔。
『なになに?』
『一体、何を見つけたんだい?』
電話の向こうの二人は見えないから、どうしたんだ? と、そう聞いてくる。まあ目の前のメンバーは、目を見開いて固まってるけど。
「オレが見つけたのは、ただのレシート。コンビニのなんだけど」
そう。そこにはおにぎりとかお茶とか。そんなのを買った形跡が残ってる。でも、重要なのはそこではない。
「そのレシートに書いてあったのは、京都のとある店舗」
『『――!!』』
「これなら、……少し絞れたんじゃないですかね」
先生から聞いた。あいつが言ってたのは京都南部。その条件にもビタッとハマってくる場所だ。
「取り敢えず父親の方は置いといて、先に母親の方へ行ってから、調べてみることにしませんか」
そのオレの意見に、みんなが賛成した。でも、……どこかアオイの声色は暗かった。



