するとみんなに「今日!?!?」と驚かれてしまった。
「え。そうだけど?」
だって、報告はいつもその日にしてる。昨日のうちにできたらよかったんだけど、流石にこんなこと、その場のノリで合わせてできようなものじゃない。しかも失敗したら、確実消えるしね。
「だから、延びれば延びるほど家には怪しまれます。やるなら今日の夜。報告に行ける最後の日しかない」
無茶なことは十分わかってる。でも、オレが消えたりなんかしたら、元も子もない。
オレの真剣さが、どうやらやっと伝わったみたいで、みんなして大きく頷いてくれた。
「でも九条くんが行かなくても、また別の日に私が忍び込むことだってできるのよ? だからそんな焦らなくても……」
「でも、動ける駒は多い方がいい。それだけたくさんの目で見張っておく方が、行動する方も安心です」
「まあ、それは確かに……」と、彼女も納得してくれる。
『ヒナタ! わたしは? わたしは何したら』
「報告ってアオイが出てくるような時間帯に行ってないから。夕食の時間帯ぐらいに行って、すぐ帰るし。だからアオイは、オレが明日ちゃんとまた電話に出られることをただ祈ってて」
『……何も。できないんだね』
「アオイが動いたら家にバレる可能性だってあるし。……今回のアオイは、成功を願っておくのが仕事。いい?」
『うぅ……。わかった……』
それから人員配置を決めて、監視カメラ操作も、なんとか一時の時間を繋ぎ合わせることで、オレの存在をカメラから消すことができみたいだ。やり方はカオルがコズエ先生に念入りに教えてもらって操作するみたい。
「(恐らく秘書が何かしら掴んでる。あの異常さだし、写真があるぐらいだ。撮っていたのはあいつだけ。だからどこに住んでるのかもわかってるはず)」
いっときの時間を繋げられるのは、たった五分。
その中でオレは、何かしらの情報を掴むことができるのだろうか……。
――――――…………
――――……
『九条さん! あと一分しかありませんよお!』
「うん。わかった。カオルは秒数数えてて」
そう言ったら、耳からカオルのふざけたカウントが聞こえてくる。
「(データの方は終わってる。これは抜いて……)」
パソコンからUSBを抜き去った。問題は――……。
『30、29、28……』
「(……ダメだ。わかんない)」
……せめて何か。何かないか。
そう思いながら当たりを見渡す。
「(ゴミ箱……)」
何故かわからなかったけど、不意に気になったそのゴミ箱の中を探してみることに。
『20、19、18……』
「(……まあ、これぐらいしかわからないか)」
そのゴミ箱から出したものを拾って写真に撮り、何事もなかったかのようにオレは秘書の部屋を出た。
『10、9、8……』
「普通そこまでカウントしたら声張るぐらいしない?」
『あ。終わりましたかあ? 3、2、1!』
そしてオレは何食わぬ顔で、道明寺を後にした。
『九条さあん。何かわかりましたかあ?』
「うーん。ハッキリした情報はなかったけど……」
取り敢えずは、また今日も先生の部屋に集合ってことで。
「(このUSB。オレの予想だと、あんまりいいものは入っていない気がするけど……)」
まあ、まずは見てからだ。
これでやっぱり何も掴めなかったら、申し訳ないけどオレの駒たちに頑張ってもらうしかない。
「(確信はないけど、まあまあ悪くない情報が手に入ったんじゃないかと思うんだけどね)」
オレはカオルとの電話を終え、軽い足取りで一旦帰宅した。



