それから、その状況を作り出すために話は最初に戻るけど、『味方はいないんだぜ! しかも時間もないんだぜ! おバカちゃん作戦』を話した。
一つは、シントさんを利用したところで、全部家にバレているということ。でも記憶に関しては、彼は『忘れたまま』だということ。あいつは『戻す気はない』と伝えておく。
まあ、オレもシントさんに会えないのにトリガーなんてどうすんだろうとか思うけどね。なんか秘策があるみたいだから、そこら辺はアオイを信じる。
二つ目は、アイが婚約者だとバラすこと。絶望に追いやられるだろうから、家にとっても好都合のはずだ。
三つ目は、味方だと思っていた先生、レンが家側だとバラすこと。このことも、あいつにとっては大ダメージだ。そして家にはこれも好都合。
四つ目は、オレのことも家側だとバラすこと。
「それも、あおいさんを追い込むために?」
「それもあるけど、あいつが絶対にもう、誰にも話さない状況を作るんだ」
「ん? 九条、矛盾している。それではあおいさんは自分のことを誰にも話さなくなるぞ」
「ううん。これでいいんだ。オレの作戦は、あいつが誰にも話さないようにさせるから」
「でも、彼女に話してもらうように追い込みをかけるのに、話さないようにするとはどういうことなんですう?」
「うーん。まあなんとかなるからさ。そこら辺のことは心配しないでよ」
たとえこれが、最低のやり方でも。でももう、時間がないんだ。
「実は言ってなかったけど、この間秘書と接触してさ」
秘書から、姉の事件について、あいつがしたことではないことを聞いたとみんなに話した。
『え?! ……だったらもう、ヒナタに嘘ついて利用してたのも、家は知ってるってことだよね!?』
「うん。向こうも、不味いとは思ってるかもね、オレのこと」
『だったらもう、あの家での日向くんの立場は危うくなるんじゃ……』
「でも結局のところ人質を取られてはいるんで、表向きはあの家には逆らえないことにできるんですよ」
そう。だからあの家にとって、オレはまだ使えると思わせる必要がある。
「そこで最初に戻るんですけど、誰にも話させない状況にするために、オレを使って欲しいんです」
今、オレのスマホにはあいつが自分のことを話したデータが入ってる。それを利用して、わざと家に攻め込ませる。それが罠だとも知らずにね。
「あいつが多分これ以上のことを話すことはないと思うんですけど、家はこれ以上情報を外へ漏らすことを警戒して、オレやみんなを消そうとする」
でも、オレはまだ使える道具だから、そんなことをするのはおかしいとかなんとか説得してもらって、オレをなんとか今の状況を利用するよう家に説得をする。
「だってオレ、家にいろいろ貢献してるし。勿体ないでしょ?」
そうだな……。次にあいつから何か情報を得て、あの家に行ったなら……的な具合にしようか。
『でも今すでにヒナタは危ない状況じゃん! 今度来たら、次とかそんなの関係なしに消されるかもしれないんだよ!?』
「大丈夫大丈夫。言葉の言い回しには気をつけるからさ」
「まあ九条くんに一目置いてるみたいだから、その場ですぐには殺すことはなさそうだけれどね」
「え。殺されそうだったら助けに入ってくださいよ先生」
「わ、わかってるわよ……!」
家からオレに、それが『最後の仕事』としてそう伝え、あいつにも誰にも話せない状況を作り出す。……まあ、別に話してもいいんだけどね。オレ次行ったらもう、あの家の敷居なんて踏むつもりないし。
だから、なんとかあいつからそんな話を聞いたんだと、……そう報告しに行った日は、何とか生きて帰って来ないとね。
「(みんな、これで本当に上手くいくのかって顔してるな。まあ大丈夫だって。オレに任せておいてよ)」
みんなに罪を背負わせるわけにはいかないんだ。
「(……オレだけでいい。こんなこと、もう誰もしなくていい)」
ひとまずは、オレとあいつを表向き、そういう状況へと追い込むこと。これをすれば、家がここにいるみんなを疑うことはないし、ここまでは家にとっていいことばかり。水面下でそんな動きがされてるとはわからないはずだ。
……そして、最後。問題なのは――――……。



