すべてはあの花のために➓

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 あのバカな子。やっぱりお友達に喋っちゃったみたいね。……ここはやっぱり、消すしかないかしら。


「……エリカさん」

「あらレンくん。どうしたのかしら?」


 そう思っていたら、今し方彼が出ていった扉から、銀髪の子が入れ違いに入ってきた。


「……あの、さっきそこで九条と擦れ違いまして」

「早く用件を言いなさい」

「今日、あいつがどんな報告をしたのか聞いたんです。……エリカさん。何を、するおつもりですか」

「何って。……レンくん? あなたが思っていることだけど?」

「ま、待ってください。あいつは別に、ここが“そういう場所”だと気づいても、彼女に“そういうこと”はしていくと言っていました。それに、あいつの人質は私や家族のはずです! あいつの友達たちではない!」

「そんなの知らないわよ。芽は早く摘み取るのが手っ取り早いし」

「お、お願いです。まだここのほんとのことがあいつにも、彼らにもバレたわけじゃない! だからまだ」

「あーうるさいわね。バレてからじゃ遅いに決まってるでしょ。早速手配を」


 と思ってスマホに手を伸ばしたら、後ろの物陰から「お待ちください」と声が掛かる。


「あらアメ? どうしたのかしら」

「少し、耳に入れていただきたいお話が」


 そっとアメが耳打ちしてくる話は、……彼らの報告を聞いてたから予想はついていたものだった。


「やっぱりあの子、元の家に帰すつもりだったのね」

「はい。記憶は消すみたいですし、記憶も戻すつもりはないみたいなので、このままあの家を使うことも容易かと」


 そうね。それを計画してくれたのは、紛れもなくさっき出ていった子だけれど。


「私の方から言うのも何なのですが」

「ん? 何? 言ってみて?」

「先程の報告を聞いていましたが、流石にここで切り捨てるのは勿体ないかと」

「でももうあの子は、あのバカな子をここまで連れてきた経緯を知ってしまったわ? もうバレるのも時間の問題よ」

「ですが、常に監視をしていて思います。彼女は、自分がしてきたことや、この家がしてきたことは誰にも言うつもりはないのではないかと」

「でも、言わないとは限らないでしょう?」


 今まで誰にも自分の出生を話してこなかったのだ。それに、自分が気持ちが悪い存在だとも。それを彼らに話したということは、……その可能性だってないわけじゃない。
 だから、そんな芽は早く摘み取ることに越したことはないのだけれど……。


「では、“言わせない”ようにすればよろしいのではないでしょうか」

「ん? どういうこと?」


 このアメも、昔使ってた道具の娘なだけ合ってよく頭が動く。いい道具よ、あなたもね。


「レンくんに同情するわけではありませんが、彼をそのままここで消してしまったら、勿体ないのではないかと思うのです」

「そうね。惜しい道具を無くしてしまうわね」


 ここ最近じゃ一番面白かったのに。でも彼が敵に回ってしまっては、使えなくなるよりも痛いわ。だから、敵になる前に消すのだけど。


「はい。……ですので、彼にも『最後の仕事』をしてもらえばいいのでは?」

「最後の仕事……?」


 その最後の仕事というのは、彼からまた、バカな子の何かしらの報告があれば消すというもの。


「でもアメ? そんな危ない橋渡るぐらいなら、さっさと落としてしまいたいわ?」

「ですので、“言わせなくすればいい”と思うのです」

「……だから、それはどういうこと?」


 それからアメが提案してきたことを聞いて、勝手に口角が上がった。


「……何それ。とっても面白そうじゃない?」


 その提案を呑むことにした。彼が、……次にここの敷地を踏み入れたが最後。


「この世から、消してあげるわ」