すべてはあの花のために➓


『……っ、くっそ。みんな。わたしからもあるから聞いて!』


 きっと今日で、こんな胸糞悪い場所ともおさらばかな。


『わたしが家に駒扱いされてるのは、本当の子供じゃないから!』


 ま、それはそれでオレは嬉しいけどね。


『本当の親には捨てられたの! 気味悪がられて!』


 駒の人たちには、思う存分悪役をしてもらうことにして。


『拾ってくれた人は、とってもいい人たちだったけど、今のお父様にお金と引き替えにわたしは道明寺に引き取られたの!』


 オレは、本当に裏切り者だってことをわからせればいい。


『なんでかっていうと、わたしが異常な子供だったから! 頭がよかったから! 他にも理由あるけど主にはそれ! 頭を買われたの! お金としか思われてないの! 以上! ごほっ。文句あっかこらあー!! ごっほごほっ』


 次にここに踏み入れたら最後。オレの命は、吹っ飛ぶんだろうけどね。


「…………」

「とまあ、こんな感じですね。だから、ここの家で生まれたわけじゃないんだってことは、よ~くわかりましたよ」


 それで無表情ができていると思っているのか。ま、オレはここで言葉を選び間違えたら、次来るどころか今すぐに消されるんだろう。それだけは気をつけないと。


「……ふーん。そう」

「別にオレは、これとか姉の事件の真相を聞いたところで、人質が取られてるのは変わりないんですから、やることは変わりませんけどね」


 それも、表向きはだけど。オレの大事な人たちを、……そう易々と人質に取られて堪るものか。


「だから、これからあいつを痛めつけるのはやめることないんで。それじゃ、また何かあれば報告に来ますね」

「……ええ。また、待ってるわ?」

「……失礼します」


 そう言ったケバ嬢の瞳は、ぎらついていた。……危ない危ない。やっぱりひとつ言葉を間違えたら、ここでさよならだったな。


「(……さてさて。動けるのは『今日まで』だからね)」


 にやける口元をスマホで隠し、オレはある場所へと足を運んだのだった。