すべてはあの花のために➓


 みんなに話すことを提案したけど、やっぱりちょっと嫌そうだった。オレには話してくれたのに。……え。オレに嫌われてもいいとか、そんな理由じゃないよね?


「(でも、みんなもきっと聞きたい。もちろんこいつの口から)」


 やっと、心開いてくれたんだって。絶対に喜んでくれると思う。ほんと、やっとかよって思うけどね。


「オレも嬉しかった。あんたの口から、そうやって聞けたこと」


 こいつを本当に助けたいと、そう思ってくれる人が必要だった。誰の意見もない。ただこいつの話を聞いて、一人一人がどうしたいか。
 危険だとしても助けたいか。こいつの運命を知ったとしても。他人の意見に左右されず。ただ、一人一人が判断して欲しかった。


 だから、こいつの口から直接の話を聞かせるために録音だってした。盗聴だってした。
 ……それでもやっぱり。オレも、こいつの口からたくさんの感情を込めて話してくれたのが、本当に嬉しいんだ。

 嬉しかったのと同時に、絶対に助けてやりたいって思った。……それから。


「オレも。……あんたのこと、もっと好きになった」


 頬同士をつけているから、それだけで顔を赤くしたのが見なくても十分わかった。


「オレと一緒に自分のこと話そうよ」


 ほんと、いろいろ誤算が多すぎたな。まさかオレが。……捻くれきったオレが、過去を振り切ってここまで変われるなんて。

 それに、オレだって勇気なんてなけなしで。こいつの背中を押してやれたのが奇跡のようなものだ。
 でもオレも。みんなにちゃんと話さないといけない。……進むよ。あんたと一緒に。

 こんなこと考えられるようになったのも全部、……こいつのおかげだ。


「(……ほんと、大誤算だ)」


 こんなこと、思うなんて。やっぱり目の前のこいつが愛おしいと、……そう思って。
 ……勝手に、体が動いて。あいつに気づかせないように、キスを落としたりするなんて……。


「(ほんと、どうなるかわかんないね。だから、一緒にいて楽しいんだ。だからオレは、……あおいが好きなんだよ)」


 一緒にいてねと。そばにいてねと。不安げに。切なげに言ってくる小さな体を、これでもかというほど思い切り抱き締めた。


「(もう離さないよ。……いなくなったりなんて。しないから)」



『だから、絶対に助けてやる』と、心に大きく誓い。

『……だから、幸せになって』と、……心の中で呟いた。