すべてはあの花のために➓


 …………なのにい~……!!


「このオレが、助けてあげるって言ってんの。これ以上ない味方がついてんの! いい加減話せよこのバカ!」

「ば。バカって余計……」


 言ってやったし。クソ頑固野郎!! いい加減折れろ! こん畜生!!

 でも、なんだか目の前のあおいは、嬉しそうな顔をしていた。
 ……マジか。やっぱりここまで言われて嬉しいとか、かなりのドM……。


 絶対嫌わない。絶対だ。
 もう、ちゃんとあんたのこと、オレはわかってあげてるから。だから。……勇気、出して。

 あの頃出なかった。オレだって勇気が。
 だから『仮ものの姿』で、あんたを笑顔にする方法を選んだんだ。


「(でも、ちゃんとわかってる。それは、今やっちゃいけないことぐらい)」


 あれからどれだけ勇気が溜まっただろう。でも、今のこいつには、……絶対に届けたい。


「(ルニじゃない。今のオレが。あんたの太陽に。この一瞬だけでもなってあげたいんだ)」


 ずっとは無理だ。でも、ほんのひとときでも。――君の花を咲かせる手伝いをしよう。


「お日様をなくしたお花のあおいさん? オレがあんたの太陽になってあげるから。どうか話してくれませんか?」


 話してみて? あおい。
 話してくれた分だけ、あんたは強くなる。話してくれた分だけ、あんたをあそこから助ける道に。一歩、近づくんだ。


「はいっ。わたしのお日さま? 聞いてて楽しいものじゃないけど、よければ少しだけ、聞いてくださいな」


 嬉しそうに笑ってくれたあと、『助けてくれ』と。中に織り込まれた自分の話をしてくれた。



 言ってる途中で流す、綺麗な涙をそっと拭う。
 余程つらかったんだろう。ひしひしと。イヤホン越しでない直接の、こいつの声で。その悲しみや苦しさが、より一層強く伝わってくる。

 これ以上は言いたくないと、オレの方に体を預けてくるあおいを、思い切り抱き締めてあげた。


「よく頑張りました」


 ほんと、よく頑張った。……頑張ったね。ほんと。
 今まで全然言えなかったことに比べたら、ここまで言えたら大前進だ。


「(こんなの全然、嫌うわけないのにね)」


 余程、両親のことが原因で自分のことが話せなくなってるんだ。
 ……でも、ここが限界か。あと三つくらい言えないことがあるらしい。ひとつはカードに少しだけ書いて伝えたって言ってたから。


「(まだ見てなかった、そういえば)」


 でも確かアオイのことと、家が嫌だってことだったと思う。あとで確認しておこう。


「(あと二つって何だろう)」


 ……あれかな。もしかして、オレらにしてしまったこと。それから運命?


「(もしかしたら人質のこともか)」


 まあ、くらい(、、、)って言ってたから。理由同士でどこかが被ってたりするのかもね。


「(……でも、ここまで言えたんだ。絶対に大丈夫)」


 それに逆にここまでなら、みんなも嫌いになったりする要素なんてない。頭がいいっていうことで妬んだりするような奴らじゃない。ああ見えてみんな、成績だけはいいし。