「どうしてって。……レンに連れてこられたんですけど?」

「おい九条、違うだろ。お前が脅したんだろうが」

「え? ちょっとちょっと」

「は? ……何。そんなにあの動画全国に流されたくないんだ」

「当たり前だ! 流されでもしてみろ! 私も、それから流したお前だってただじゃ済まないんだぞ!」

「ちょ、……レンくん」

「そんなの知らないし。なんでこんなことしたのか聞いただけじゃん。なのにこんなとこ連れてきてさー」

「あれが聞いた内に入るか!! ふざけるのも大概にしろ!!」

「……レンくんうるさい」

「ほんとうるさい」

「九条!!」

「使えない道具は黙ってなさい」


 ピシャリ。声を発すると、水を打ったようにあれだけうるさかった部屋が静かになる。


「あなた、どうしてこんなところにいるの?」

「ふーん。名前なんか聞かずにそんなこと聞く当たり、オレのこと知ってるんですね」

「ええそうね。だからすっ飛ばせてもらったけど」

「でもオレ、あんたのこと知らないんで。それにレンがなんであんなことしたのかも。なんでそれを見られちゃいけなかったのかも」

「なんであなたのような子どもに言わなくてはいけないのかしら?」

「え。だったらこの動画ばら撒いていいんですか?」

「そうしたらレンくんはこの世からいなくなるわね?」

「……ふーん。よくわかんないけど、それは嫌だからやめておこ」

「あら。お友達思いなのね?」

「だって、レンいなくなったらオレの課題誰がするの」

「「え」」

「それに起こしてくれる人もいなくなるから困るし」

「え。……ちょっとレンくん? 仕事さぼって何してるのかしら?」

「だから! 脅されてるんですって……!」


 そんなことを話している間、彼はスマホをいじっていた。


「はい。削除したんで、レン殺さないでくださいね」

「「え」」


 そう言って写真のデータを見せてくる。そこにはもう、使えない道具が映っているものはなくなっていた。