すべてはあの花のために➓


 そんなことを思っていたら、あいつが「大丈夫だよ」と、小さく零した。


「言ってないこと、あるでしょう?」

「……!」


 言い切ったこいつに、もう何もかもバレたのかなって思った。


「君がお母さんを止められなかったのは、危ない目に遭わされたんじゃない……?」


 でも、オレが思ってたこととは違った。母さんのことだったけど、……でも。そんなことも、こいつには言ってないというのに。


「……もっと、オレが支えてやれてたら、何かが違ったのに」


 今でも、過去に終止符は打ったとしても、思ってしまうんだ。……あの時、こうしておけばって。


「否定はしないよ。でも肯定もしない。そんなこと、なってみないとわからない」


 そんなことないよ、……とか。そう言ってもらうよりも、なんだかストンと、その言葉を聞いて落ち着いた。


「……でも君は、よく一人で頑張ったね。お疲れ様」


 オレの頭を撫でる手が。表情が。雰囲気が。何もかもがあったかくって。……やわらかかった。


「……ふふ。キサちゃん奪還の時とは反対だね」

「そんなこともあったね」


 あの時も。……めっちゃ歪んでたな。でも、信じてた。こいつならやってくれるって。
 ……だから今度は、オレを信じて欲しいんだ。

 気持ちよかった。撫でてる手が。止めたくなかった。その撫で続けてくれる手を。


「……約束。今、いいかな」


 でも、ちゃんと果たそう。オレの、……正直な気持ちを。


「どうぞ」


 オレは、傷つけるよ。……それでもいいというなら。


「(……ほんと、ドMなんだから)」


 嫌われる覚悟で話そう。これは、ある種のけじめだ。


「……わたしが、ひ、……君を嫌うかもしれないって。そう思ってるの……?」


 もちろん。ずっとずっと、思ってた。


「君が、必死で隠してることとか。バレたくないことをもし知って。……それで、わたしが君を嫌いになるのが、君は嫌だって。そういうこと……?」


 そうだよ。あんたに嫌われることが一番、オレは怖かったんだ。

 ――だから言うよ。わけは言わない。言えないけど。


「正直、見せる気なんてなかったんだけど」


 ほんと、『これ』を見せるつもりは全然なかったのに。


「友達だってオレが認めて、その後嫌われるのだけは勘弁」


 だから。……嫌うなら今、嫌って。


「だから、今見せる。オレのこと嫌いになったら、もう一生オレと友達になろうとか言ってこないで」


 もうオレに、近づこうなんてしないで。