すべてはあの花のために➓


 ……でも。


「言いたいことはそれだけ?」


 オレは、変えてなんか欲しくない。変わっちゃ、いけないんだ。


「母さんは、父さんの仕事場からこっそりハルナの資料を見てた。それで、きっと父さんが何か言ってくるだろうから、ちゃんと支えてやるんだって。ずっとそう言ってたよ」


 仕方がないから話してあげるよ。あの時言えなかった、オレの罪を。


「……そんな母さんの気も知らないで、ハルナが死んだのを母さんのせいにしたのは父さんじゃん」


 あの時オレが言っておけば、こんなことにはならなかった罪を。


「父さんを支えるつもりだったのに、母さんはショック受けてた。それをオレは知ってたから、母さんはオレだけは放さなかった」


 今更言ったって。どうやったって、過去はやり直せない。


「ハッキリ言って、今更なんだっていうの。……今頃謝りに来たって、何もかも遅いんだけど」


 もう、遅い。何もかも。
 だからもう、オレなんか放っておいてよ。早くここから出ていって――――。

 ……そう、思っていたら。本当にもう。何もかもが遅かった。

 オレの。『間違い』が。……現れてしまったから。



「はるちゃ~ん? どこ~?」


 やばい。……やばいやばい! 
 流石にもう、こんな状態を見られたら取り返しは付かないけど。


「……やばいッ。みんな速く逃げ――」


 このままここにいたら、マジで母さんみんなに怪我させるかもしれない。みんなはダメだ。早く隠れるか、こんな家から出て行って。
 オレは、……もういいよ。もう疲れた。あとはみんなに任せればいいんだ。今まで必死に隠してきたのに。一番バレたくない奴に、オレの罪が。汚さが。……バレたんだから。

 もう。疲れたよ。母さん。もう。……楽にさせてよ。


 ……楽に。……なりたいのに。


「――――っ」


 ……なんであんたは。オレのことを庇うんだ。


「あんたもさっさと逃げれば?」


 そうやって。やっぱりオレのこと。邪魔するんだね。


「君が逃げないならわたしだって逃げないよ」


 違うか。いつも。……ずっと、守ってくれるんだね。


「そのうち包丁が飛んでくるよ」


 あんたを助けたかったはずなのに。なんで。


「だったら君の盾になろう」


 オレが今。あんたに守られてんだよ。