「……マジで会わないつもりなのかよ」
確かに、理事長に願いを言われたのもあるし、彼女に少しでも会いたいからっていうのもある。
「でも一番の理由は、……そんなお前が心配だからに決まってんだろ」
捻くれてたのは、もう十分知ってる。あいつのその捻くれた性格のせいで、自分の殻に閉じこもっていたことも。
「だから、……教えてやったんじゃんカメラ」
昔、陽菜に相談されたことがある。自分ならあいつのことを、変えてあげられるんじゃないかなと。
「まあ、俺の見方もあれのおかげでだいぶ変わったし、あいつにもなんかいい影響があればいいなと思って教えてやったけど……」
案の定めっちゃハマってたけど。絶対遊びに行く時持ってたし。……今思えばかわいいよな、うん。
「結局のところ、葵ちゃんに言われない限り俺は動けない」
でも、俺だって動いてやりたい。なんで彼女一人でしないといけないのかはわからないけど……。
……大事な。俺の弟でもあるんだよ。お前は。
「って言ったら陽菜に怒られるかな。翼にも」
……見てるか陽菜。またあいつのことを変えられるように、俺も頑張るからな。
満天の星空の下でそう呟いて、不良教師の家へと帰る。
トーマが見てないところで、星がひとつ瞬く。
彼の呟きにそっと、返事をするように。



