すべてはあの花のために➓


「お前だって、笑顔にしてやれるんだよ」

「…………」

「お前は変われるよ。大丈夫だ」

「……変わっちゃ。ダメなんだ」

「日向、まだそんなこと言って」

「これは、……どうしても変えられない、から……」


 母さんのことも。……今、立ててる戦略も。


「でも、なんかスッキリしたよ。また4月ねトーマ」

「えっ。……おい! なんで3月ぶっ飛ばしてんだよ!」

「……そう言うってことは、2月後半のこと知ってるの」

「まあな」

「最低。プライバシーの侵害」

「知ってるっつっても、お前が学校に行かないらしいってことくらいだよ」

「十分侵害」

「……日向。俺さ、卒業式終わったらまたこっち帰ってくるんだ」

「それまでに新居決まればいいね。妨害してあげるよ。よかったね」

「いややめて。お願いだから」

「あっちはいいの? アヤメさんとサツキさんは?」

「大丈夫だ。もうだいぶ前から言ってるから」

「ふーん」

「……2月。ギリギリいっぱいまで、こっちいるから。なんかあったら言え。そのためにいんだから」

「それが理事長の『願い』だから?」

「……!!」

「なんで知ってるかって顔だね。……そうだね。わけがあるからだよ」

「ひ、なた……?」

「ごめんけど、こればっかりはトーマも近寄らせない」

「っ、日向!」


 ダメなんだって。近寄ったら最後、みんなを巻き込む。
 みんなに。……嫌われる。


「いろいろ気を遣ってくれたみたいでありがとう。でも大丈夫だから」

「日向待て! まだ話は」

「ああ。わけに関しては、ちゃんと話す時が来たら話すから」

「日向……」

「それじゃあねトーマ。先に言っておくよ。卒業おめでとう。それじゃ」


 そう言ってオレは、振り返らずにさっさと家に帰った。