『ちゃんと知りたいんだ。お前のこと。いいよ。言えるまで俺は待つ。でもお前には時間が限られているから、その時は遠慮なく行かせてもらうよ。お前を俺は、絶対に助けてやるから』
『……ありがとう』
「(やってるやってる)」
オレはいい。でも、みんながあいつとあのままの関係なのは嫌だ。オレもこれを成功させたらそこそこ信頼される位置にいくと思うし、みんなのことを報告しなくても十分でしょ。
「(まずはアキくん。あの時の録音も聞いたけど、アキくんはあの手紙のおかげか、あいつを傷つけるようなことは言わなかった)」
オレも、そう言えればいいんだけどね。
「(アキくんもわからないことだらけだから、整理しながらってとこか)」
それに、どうやらあのカードを渡しているみたいだ。どれだけコズエ先生が、あいつにバレないように難易度を下げたのか見物だけど。
『これも、絶対わかってみせるからね。最後まで諦めない。……ごめんけど、負けず嫌いの諦め悪い奴だから。その辺覚悟してて?』
「(カナもOKっと)」
あいつの場合はアキくんへの嫉妬だろうから、そんなに心配してたわけじゃない。
『無理に聞こうとしてごめん。どうかしてたよ』
『あーちゃん。だからまた、おれとたくさん話そ?』
確かにあの時のみんなは、あいつのことが大事すぎて、ちょっと冷静にいられなかったとこがある。
「(あいつらも、ちゃんと謝れてよかった)」
このままはダメなんだ。だから本当に、仲直りできてよかった。
『……すきなんだっ。あおい』
「(おい。告白する前にちゃんと仲直りしろよ)」
しかもそのあとマジでチカが襲い出したから、オレは連絡を取った。
『どうした』
「大急ぎで体育倉庫まで行って。そんでもって、扉とか壁とか思いっきり殴るか蹴るかしてきて」
『今までで一番意味がわからない』
「今あいつがチカに襲われ――……切られたし」
でも、そのあとイヤホンから凄まじい――ドンドンドンドンッッ! って音が聞こえたから、あいつの話題を出せばレンもなかなかやるじゃんと思った。
「レンー? 生きてるー?」
『はあ……。はあ……。……死んでる』
「よし。今日は頭よしよししてあげよう」
『いらん』
どうやら本気で底力を出したらしい。よくやったもやし。
「(って、結局マーク付けられてるしっ)」
本当に、こっち方面の守備が弱すぎなんだけどっ。
『俺が嫌だったんだ。お前に手、上げたから。……すごい、後悔してた』
「(ツバサ……)」
確かに聞こえた。あの時、ツバサがあいつを叩く音が。
「(……まだ、手を出した方がいい)」
ほんと、手を出された方がいい。言葉は、本当に傷つくから。
「(自分が一番、嫌と言うほどわかってるのにね)」
それでも、こんな方法しか選べない自分はやっぱり。もう、……壊れてしまったのだろうか。
手を上げられずに来た。今まで、ずっと。言葉で言ってくれた方がいいと、何もされないよりはマシだと、……そう思っていた。
でも、長い間そうだともう。……おかしくなる。壊れてる。もう、とっくの昔からだ。
……それでもオレは、決めたから。オレは今、あいつのためだけに生きてるから。
『……わかんない』
大丈夫。あんたにしか、わかるわけないじゃん。オレの居場所なんて。
『向こうは、わたしなんかに見つけて欲しくないのかもしれないけど』
見つけて欲しくないよ。消したはずなのに来られるなんて。……ほんと、期待してしまうから。
でも、見つけて欲しくもあるんだ。ほんと、矛盾してるよね。
「でも、やっぱり見つけて。ここまで来て? あおい」
今度こそ、壊してあげるからさ。その、……貼り付いた仮面を。



