『ヒナタが乗り込むぅうう……!?』
「うるさい」
アオイがキングになったあと、オレの頭の中にある戦略をみんなに話した。
もちろん理事長に電話も繋げて。電話二個と話すって、結構な違和感だけど。
『ちょっとちょっと! 日向くん。せっかくみんなが仲間になってくれたんだ。もうちょっと違った方法を考えた方が』
「駒の分際で何言ってるんですか黙っててくれます?」
『……はい……』
電話の向こうの二人はそうやって大きな反応を示しているけれど、オレの目の前にいる人たちは、口をあんぐり開けてしまっていて、完全に阿呆面だ。
……オレだって、あんなことを言われなかったら、もっとじっくり違う方法を考えたかもしれないけどさ。
――――――…………
――――……
「すごく言いづらいんだけど、あおいさんの本当の婚約者は俺なんだ」
「……ちょっと、意味がわからないんだけど」
話を聞いたら、アオイの婚約者候補としてアキくんが加わっただけで、あいつの本当の婚約者は最初からアイだったらしい。アオイのお願いを利用して、婚約者候補として皇を操る作戦だったようだ。
もしこの縁談が破談になったとしても、そんなことがあった皇はすでに大ダメージ。あいつはアキくんの誕生日に挙げる予定だった式をアイの誕生日で挙げることになり、アキくんとの縁談を破棄すれば余計に消える日にちを早めてしまうと。
「(でも待ってよ。オレの勘だけど、シランさんと話していた提携はこのことな気がするんだけど)」
よかれと思ってしたことが、まさか裏目に出ていたと気付いたら、あいつ傷付くだろうなあ……。
「だとしたら多分、もうアイの誕生日があいつの限界だ」
「なんでわかるんですかあ?」
「とある筋からの情報でね。……家は恐らく最初から、あいつのことだから何かするんじゃないかと疑ってたんだ」
「そうだな。常に先々を見据えての行動を、秘書のミクリさんがしてきてた」
秘書、ね。直接はこいつらに指示や警告なんかを出してないし、一番何をしてるのか、何を考えてるのかわからないけど。
「アイ。誕生日はいつなの」
「…………ご、5月」
「ふざけんなよ」
「そんなこと言われてもお……!!」
もうあと五日もしたら年越すんだよ? しかも誕生日5月の上旬とか。四ヶ月ちょっとしかないじゃん。
「……しょうがない」
「九条くん?」
「今、あいつの名前の情報に関しては、あの家が握ってるんじゃないかってとこまでしかわかってないのが現状だ」
『……そうだね。私もそこまでは調べられなかった』
「なのでオレ、家側になります。一人でも多くあの家に潜り込んだ方が、見つけられる可能性は増えるだろうし」
『あ、危ないよ……!』
「大丈夫だよアオイ。オレ運めっちゃあるから」
『そんなのただの運だよぉおお……』
でも、今圧倒的にこちらが劣勢だ。このままじゃ不味い。
「ねえ先生。オレだってあの家に入れる資格、持ってますよね?」
「え? ……まあ、あなたも犠牲者なわけだし」
「さらに、オレは九条家の人間。さぞ向こうもシントさん同様、いい拾いものをしたと思うんじゃないですか?」
「……まあ、それも一理ある」
九条冬青の息子がついたとあれば、政治の世界だって、もっと上手く操れる可能性が出てくるんだから。



