――変わることがないと思っていた運命が。決められた道しかないと思ってた未来が。こうあるべきだと決めつけた考えが。拗れきってて不器用で、意地悪ばっかりしてきて、性格に少々難ありの彼に変えてもらえた。


「……んんっ。……はっ。んっ……」

「あれだけやったのに、まだ慣れないの?」

「……!? な。慣れ……?」

「そうそう。いい加減慣れなよ。息して?」

「……。む。無理……!」

「えー。息してよ、お願いだからさ。殺しちゃうじゃん」

「……!? こ、ころ……!?!?」

「頼むよー、ほんと。オレ殺人犯なんか嫌だよー」

「さっ!? ……い。いやだ……!!」

「いやなんないけど」


 わたしのことを見つけてくれた。わたしのことを見ていてくれた。わたしのことをわかってくれた。わたしのことを好きでいてくれた。
 だから。誰よりもやさしくて、誰よりも他人思いで、誰よりもあっかい彼の隣にいられることが。たとえ意地悪されたって、わたしには最っ高の幸せなんだ。


「……わかった。じゃあ、息止めてていいよ? どれだけ止められるか測ってあげる」

「えっ?」

「頑張って記録延ばしてねー。はい行くよー」

「ええ!? ――んん……っ!!」


 彼からのたくさんの愛を受け止める。彷徨う手をそっと彼が包み込んでくれる。
 一度、そっと離した距離は、ほぼゼロ。触れ合う場所から好きって気持ちが。絡み合う指から愛おしいって気持ちが。深く、繋がる場所からは『君しかいらない』って気持ちが溢れる。


「……好き」


 キスの合間に、紡がれる言葉。


「好き。……ほんと。おかしくなりそう……」


 わたしが苦しくなったら離して。


「あー。……もう。足んない……」


 またすぐそう言って深く口づけてきて。


「好きなんて言葉じゃ。……足んないんだって……」


 もどかしそうな彼に涙が出てくる。


「……。伝わってる……? 言葉じゃ足んないとこ……」


 目元に寄せられる唇さえ愛おしい。


「こんなんになるのも全部。……あおいのせいなんだから……」


 十分伝わっているんだと、返事をさせてももらえない。

 ……だったら、言葉以外で応えよう。
 彼と同じ気持ちを、……ううん。それ以上の気持ちを、何度も触れ合う口づけで。