「……ヒナタくん?」

「寝る」

「ええ……!?」

「だって気持ちいんだもん。流石にそろそろ限界」

「ま、わたしも眠たいけどね」

「……だったら一緒に寝る?」


 彼は体を起こし、上着を脱いでバサッと広げた。


「はい。どうぞ」

「……ヒナタくんは?」

「オレ? オレは別にいいよ。あんたはそれでも一応女なんだから」

「……ヒナタくんも、こっち来て?」

「……何。ここで襲って欲しいの」

「んなわけないでしょ」


 そう言って、二人して上着を敷いた上に寝そべる。


「……ねえ。こうなるってわかってたよね。オレはいいけど」

「わ、わたしも別にいいよ……?!」


 触れ合う距離にいられる方が、安心できるし。


「ふああぁ~……」

「ふふっ。眠いね?」

「まあね。全然寝られなかったせいだけど」

「……今は寝られる?」

「寝られるけど、寝られないかな」

「え――……っ!」


 そっと体を起こしたかと思ったら、彼は覆い被さってきた。


「あの時とは逆だね」

「ひなた。くん……」


 初めての時のことを言っているんだろう。あの時はわたしが彼を、事故だとしても押し倒してしまったから。


「……ねえ。本当に襲って欲しいんじゃなくて?」

「……!! そっ。そんなわけないでしょ!」


 太陽を背にしている彼を見るだけで、初めて会った時のことが鮮明に蘇ってくる。


「……うん。大丈夫だよ」

「え……?」


 見たことがないくらいのやわらかい表情で。雰囲気で。ヒナタくんなのに、……一瞬そうじゃない気がしてしまう。


「襲うわけないよ。……襲うわけ、ないじゃん」

「……すでにしてらっしゃいますよね」

「しょうがないじゃん。お姫様みたいだったんだもん。道着の下すぐ下着だったんだもん」

「(……どうしよ。安易に一緒に寝るとか言ったけど、寝られないかも……)」

「……ほんとね。もう絶対にしない」

「ヒナタくん?」


 手の甲でそっと、頬を撫でられる。愛おしげに見下ろされて。……恥ずかしくなって視線をゆっくり外す。


「あんたが嫌がること、したくなんてないから」


 自分が、こういうことに関して嫌悪を抱いてしまうことを、きっと彼は気にしているんだろう。


「まあオレにも限界はあるから、なるべく早いと嬉しいけど」

「……。っ。……から……」

「え? どしたの」


 視線を下げ、自分の横に手をついている彼の服を、ぎゅう……と掴む。


「……いやじゃ。ない、……から……」

「え」


 真っ赤な顔になってるのは、十分わかってる。
 だって、……すごく熱い。それでも、間違って欲しくないんだ。


「ちゃんと。……わかってる。から……」

「…………」

「だから。……その。もうちょっと……」

「…………」

「……待ってくれたら。嬉しいんですけど……」

「…………」