すべてはあの花のために➓


 体育祭の時、校舎裏に行ったわたしを心配してた、とか。体育館裏からなかなか帰って来ないわたしを心配した、とか。
 病院で様子がおかしいわたしを心配してた、とか。オウリくんの家で寝ないわたしを心配してた、とか。
 水族館で置いてけぼりのわたしを心配してた、とか。暴走した時に止めてくれたのはヒナタくんだー、とか。首里城で場所を特定してくれたのもヒナタくんだー、とか。舟に乗れないわたしの背中を押してこいって言ったのもー、とか。気分が悪そうだからついててあげてーって言ったのも、とか。ついでに飲み物も渡してこいって言われたのも……とか。


「あとは、バレンタインで泣かされたわたしがまだ学校にいることを言って、遠回しに慰めろーって言われたってこと、などなど」

「え。……トーマじゃん。なんで」

「連絡網で回ってきたんだって」

「……何それ。オレには来てない」

「そりゃそうでしょうよ」

「…………ッ、ぁあああー……!」

「ええ!? ど、どうした……!?」


 またヒナタくんは、叫びながら大の字になって寝転がってしまった。


「……何。そんなの聞いてないし。言うなっていったのに……」

「……でも、聞けてよかった。もっと好きになった」

「オレがそうって言ってないのに、みんなの話信用するんだ」

「……そうだったらいいなって、思っちゃったんだ」

「……?」

「本当だったら嬉しくって。……うれしくて。ヒナタくんに、どれだけ心配掛けてんだって思ったけど」

「ま、心配しかしてないよねオレ」

「それでも、嬉しかったんだ。わたしのこと見ててくれたから。……ちゃんとわたしのこと、わかってくれたから」


 だって、誰も信じてくれると思ってなかったんだ。こんな自分のことを。だから、それでもこうして自分の隣に彼がいることが、……本当に夢みたいだ。


「だからね? いっぱいいっぱいお礼が言いたかったの」

「……ミズカさん以上のストーカーだけどね、オレ」

「助けてくれたんだから、いいストーカーさんだ」

「……はあ。聞いたんなら別にいいけど。さっきオレも言ったし」

「うん! だからね? やっぱり本当だったんだと思って、すっごく嬉しい!」

「……そ」


 ヒナタくんは照れくさいのか、自分とは逆の方へ体を向けてしまった。