すべてはあの花のために➓


 こうやって、何かの約束ができるっていうのは、本当に幸せなことなんだ。
 約束には未来がある。それを取り付けること自体が、……わたしにとってはつらかった。だって、怖いんだ。いつ何が、どうなるかなんてわからない。


「……回してくれる?」


 申し訳なさそうに笑いながら、ヒナタくんはそう言ってくる。


「ううん。ヒナタくんに回してもらいたい。これがあって苦しいのは君だから。わたしには大事なものだけど、……前に進めた君なら、きっとできるよ」

「……そうやって意地悪するんだね」

「たまにはいいでしょう?」

「たまににしてね。……目、つむって?」


 拗ねてるような。でも、もう平気そうな顔をしてたから、小さく笑って瞳を閉じる。そしたらすぐに、柔らかい感触が降ってくる。……ほんの少し、緊張してるのか。小さく震えていた。


「(……ハートさん。今までいろんなこと、吸い取ってくれてありがとう)」


 瞳を閉じればすぐに、彼との未来が浮かんできそうだ。それぐらい、わたしにとっての未来が変わった。それはもう、……最高にいい方向へと。

 すごく小さかったけれど、カチッと音が聞こえた気がした。


「……これで、いいのかな……」

「うんっ! よくできました。えらいえらい~」

「年下扱い」

「そんなことないよ? それじゃあご褒美に、一つ話してあげようかな?」

「え? ……何。まだなんか隠し事してるの」

「まあ、これは言うなって言われてたからだけど……」

「……ちょっと待って。それ、すごい聞き覚えのある言い方なんだけど」

「覚えてるかな? ヒナタくんと二人で、生徒会室に残った時のこと」

「……うん。覚えてる、けど……」

「そこでわたしが『だめ! 絶対に言えないの!』って言ったのは?」

「なんかそんなのもあったね。みんなにも、ガードの緩いあんたにも苛ついてて忘れてたけど」

「え。な、なんかすんません……」

「いや、冗談……でもないけど。それで? それがどうかしたの?」

「(冗談じゃないのか……)あのね? その前にわたし、ヒナタくんのこと無視しちゃってたじゃない?」

「そうだね。酷いよね。こんな幼気な少年のことを無視するなんて」

「い、幼気かどうかは置いておいて。そのことに関して、すごくみんなが心配してたの」

「オレもさ、聞かれたけど言えなくて。嘘だってわかってても、オレの口から嫌いとか言われたって言いたくないし」

「す、すまん。……まあそこでですよ」

「そこで?」

「めちゃくちゃみんなからヒナタくんっていい人なんだアピールをされまして。……いや、知ってるよ? 十分すぎるほど」

「……何。何話したのみんな」

「えっとねえ……」