すべてはあの花のために➓


「……ジンクス、本当だった」

「え?」

「キサちゃんが教えてくれたジンクス。ヒナタくんが適当に作ったんでしょう?」

「……適当でもないよ」

「え?」

「解除しちゃったら、証拠が無くなっちゃうから、レンに鍵はさしても回すなって伝えようと思ってたんだ。それで、あんたには内緒で回収しろって」

「………………」

「あんたにとって、レンといることが幸せだと思ってたから。だから、ジンクスとしては適当でもなかったんだ。それとなくこれが拾って、あんたを助けて、そのペアを持ってる人が現れる」

「ヒナタくん……」

「今はそれがオレで嬉しい。……もう、誰にも渡さない」


 ネックレスに指を引っかけて、彼にほんの少しだけ引き寄せられる。


「下僕の首輪代わり、かな」

「そ、それもそれで如何なものか……」

「冗談だよ。……もう一回聞いていい?」

「ん? なに?」


 片手はハートに指を引っかけ、片手は鍵の乗ったわたしの手にそっと乗せてくる。


「……本当に、いいの」

「ヒナタくん……」

「全部全部。……許してくれるの?」

「……許さないよ」

「え?」


 鍵と一緒に、少し震える彼の手を包み込みながらにっこり笑う。


「ずっと一緒にいてくれないと、許さないんだから」

「……ははっ。プロポーズされたし」

「え……!? そ、そういうつもりじゃ――んんっ」


 言いかけた言葉は、彼に飲み込まれてしまった。


「んっ。……よく似合ってる。流石オレ」

「はあ……。え? ど、どういうこと?」

「デザインはオレが選んだから」

「マジか!」

「そうそう。……本当にいいの?」

「むう! しつこいぞ!」

「……オレのこと、ほんとに好き?」

「もちろんっ」

「オレ、めちゃくちゃ異常だよ? 引くかも。嫌いって言われても、もう絶対離してやれないよ」

「寧ろ大歓迎だ! わたしだってヒナタくんのこと、離したくなんかないもんっ」

「……趣味を疑う」

「いや自分やがな」


 彼はそっと手を握ってきて、ともにハートへと持って行く。


「昔さ。白詰草の花冠作ったの覚えてる?」

「うん。流石に全部はダメだったけど、写真に撮ってね? それから一本取って、栞にしたの」

「え。そうなの? ……じゃあ、今度見せて」

「うん。じゃあ、代わりになんか見せて?」

「……じゃあ、あんたが喜ぶもの見せてあげるよ」

「え? ……なんだろう?」

「オレの小っちゃい頃の写真」

「え」

「処分しようと思ったけど、部屋の奥の奥の方にしまってるから」

「見たーい!!」

「あと、カナタさんからたくさんあんたの写真も来たから、一緒に見よう?」

「うんっ。ありがとう!」